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虹のいえ

作者: 萩原希々

ボクはお空の上でいつもたくさんの仲間と過ごしていた。

まわりには、あったかいお日様とふわふわの雲。

ボクたちはいつもみんなで遊んでいた。


ある日、雲の間から滑り台が出来たんだ。

ボクたちはみんなでそれを滑り降りたんだ。

そしたら、地面がなくって、みんなバラバラに落ちちゃった。


落ちる時に見えたのは、綺麗な虹とあったかいお日様。

そっか、ボクのおうちは虹の上にあったんだ!


やがて地面に着いた。

周りを見ても友達はいなかった。

ボクはおうちへ帰ることにした。



ちょっと歩くと、キラキラ光る場所を見つけた。

近づいてみると、たくさんの鳥さんがいた。

鳥さんはたまにお空に遊びにきてたから知ってる!こわくない!

ボクは話しかけてみることにした。


「こんにちは鳥さん。なにをしているの?」

「こんにちはしずくさん。みずうみで水浴びしているのよ」


しずくさん?それはボクの名前?

今まで呼ばれたことがなかったから知らなかった。

【みずうみ】…水浴び…知らない言葉ばかりだ。


「ボク、おうちに帰りたいんだ。お空に帰るにはどうしたらいいの?」

「お空?飛んでいけばいいじゃない」

「ボクは飛べないよ」

「そう?それじゃあわからないわ」

「そっか。どうもありがとう」


鳥さんは、今いるのは【みずうみ】という場所だと教えてくれた。

ボクはお礼を言ってまた歩いていくことにした。

また誰かに聞いてみよう。



もう少し歩いていくと、なんだか暗くなってきた。

周りを見ると、なんだかとっても背の高い棒みたいなのが沢山立っていた。

ボクはちょっとこわくなってきた。


「君はしずくくんかい?」


ビクビクしながら進んでいくと、誰かが話しかけてきた。

とってもびっくりしたけど、誰かがいて安心した。


「こんにちは。君はだあれ?」

「ぼくはリスだよ。こんなところでどうしたの?」

「ボク、おうちに帰りたいんだ。お空に帰るにはどうしたらいいの?」

「さぁ?ぼくにはわからないなぁ。とりあえずお水のあるところに行って、聞いてみたら?」

「わかった!どうもありがとう」


リスくんが【かわ】という場所への行き方を教えてくれたから、とりあえずそっちへ向かうことにした。

親切なリスくんは、今いる場所は【もり】っていう場所で、まわりに沢山あるのは【き】という植物なんだとも教えてくれた。



リスくんと別れてしばらく行くと、【かわ】みたいな場所にきた。

たくさん【みず】が流れている、と思う。

ボクにはこれが【みず】なのかよくわからない。

とにかく、たくさん流れている場所にきた。

流れとおんなじ方向に歩いていくといい、と言われたので、言われた通りにしていると、なんだかとっても大きい生き物さんがいた。


「こんにちは。」

「こんにちは。あれ?きみは…なんだっけ?あめくん?」

「ボクはあめなの?ボクはしずくって呼ばれてたよ」

「そうなのかい?まぁなんでもいいよ」


「ところで、君はだあれ?」

「わたしかい?わたしは、くまだよ」

「くまさん。ボク、おうちに帰りたいんだ。お空に帰るにはどうしたらいいの?」

「お空?雨は空から降ってくるのに空に帰るのかい?」

「お空には帰れないの?」

「さあ?わたしにはわからないなぁ。海に行ってみるといい」

「そっか!ありがとう」


くまさんは、【うみ】はとっても遠いから、葉っぱの傘をくれた。

綺麗な赤い、くまさんのおててみたいな傘だ。



それからボクはいっぱい歩いた。

【うみ】は【かわ】から【みず】が流れて、たくさんたまっている場所だって教えてくれた。

だからすぐわかるって言ってたけど、いっぱい歩いても全然着かなかった。



ボクはいっぱいいっぱい

いっぱいいっぱい

歩いた。

空は暗くなったり明るくなったり。

でも友達は降ってこなかった。


ボクはなんだか体が小さくなった気がしたけど、頑張って歩いた。

くまさんからもらった傘がとっても重く感じたけど、大事なものだから一生懸命持っていった。



どのくらい歩いたかわからないけれど、最初に見えたキラキラ光る場所に似てる光が見えた。

もっと近づいてみると、おおきな【みずうみ】があった。

【かわ】から【みず】が流れてるから、これが【うみ】なんだ!


ボクはとってもうれしくなった。

思わず走っていったら、途中でつまずいて【うみ】に落ちちゃったんだ。

とっても焦ったけど、ボクはくまさんからもらった傘に乗ったから下には落ちなかった。


「おや?君はどうしたんだい?」


急に後ろから声がしてびっくりした。

振り返ると、見たことのない生き物さんが顔だけを出してこっちを見てた。


「こんにちは。ボクはしずくだよ。あめとも呼ばれたよ。君はだあれ?」

「はい、こんにちは。俺はさかなだよ。あめさん、君はどうしたんだい?」

「さかなさん。ボク、おうちに帰りたいんだ。お空に帰るにはどうしたらいいの?」

「おうち?君は空におうちがあるのかい?」


さかなさんはとっても驚いた顔をしていた。

なんでだろう?

ボクのおうちは虹の上にあるのに。


さかなさんは物知りで、何でもボクに教えてくれた。


ボクはお空から降る雨。

お日様が出てる時にボクたち雨が降ったから虹が出た。

雨は湖に降ったり、森に降って木を元気にさせたり、川から水として流れ、海に行く。

みんなそれぞれの場所でお日様に温められて空に帰っていくんだって。


そっか。虹はボクのお家じゃなかったんだ。

でも、そっか!ボクはお家に帰れるんだ!


「ありがとう!さかなさん!ボク、お空に帰るよ!」

「あぁ、たくさん話ができて楽しかったよ。また会えたらよろしくな」

「うん!さようなら!」


ボクはさかなさんと、くまさんにもらった傘にさよならを言うと、海に飛び込んだ。

海はあったかくて、すぐ眠くなってきた。

ボクは眠ると夢を見た。また空に登って、それからまた雨になって降る夢。


またいっぱい冒険できるといいなぁ。




おしまい



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― 新着の感想 ―
[一言] しずくくんの冒険、楽しく読ませていただきました。 お空に帰れたかな?
[一言] 自分が何者かというのは他者の認識によって決まっていくのかもしれませんね。 たくさんのしずくの集まりである海にドボンしたしずくくん。 彼の自我がどうなってしまったのか気になるところです。
[一言] しずくの大冒険でしたね。 大人になると当たり前のように感じる現象も、子どもたちに説明するとなると途端に難しくなります。自分のことを少しずつ理解していくしずくの姿は、理科に触れたばかりの子ど…
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