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79話 レベルアップと発動体

前回のあらすじ

・ジルディアス「アンデットの群れだ!」

・ウィルド「わあ、滅ぼさなきゃ」

・恩田「祓ってから移動していい?」

 ジルディアスに許可をとった俺は、道の端でアンデットたちにヒールをかけ始めた。当然順番にである。

 たりないMPはアンデット自身のものを使えば、あとはひたすら呪文を唱えてアンデットたちを成仏させていくだけだ。


「他人のMPを使ってよく魔法が発動できるな……」


 あきれたように言うジルディアス。どういう意味だか分からず、俺は首をかしげて問いかけた。


「へ? 何で? よくジルディアスに魔力渡されてたし、そう言う感じじゃないのか?」

「……そう言えばそうだったな。しかしだな……基本的に人族は他者から渡された魔力を生存のために使うことこそ出来れども、魔法と言う形で発動するのは難しいものだぞ?」

「そうなんだ……」


 ジルディアス曰く、魔力は人によって質が全く異なるため、他者から渡された魔力をそのまま自分のもののように魔法として行使するのは難しらしい。もちろん、生きるのに最低限必要な分の魔力を他者からもらえば、自分の魔力を使いきることができるため事実上のMP上限アップはできるらしいが。


 とはいえ、本質は聖剣である俺はそんなことは関係ないらしい。復活とか、レベルが上がるまでMP全部使っていたからなぁ。


 行儀よく一列に並んだアンデットたちに、順番に回復の光を与えていく。光はアンデットを包み込み、そして、灰に変えていく。

 痛くはないのか心配になるが、それでも、骨しか残っていないその体が悲鳴を上げることはない。へし折られるの結構いたいし、同じように痛みを伴っていないと良いな。


 ジルディアスの言いつけ通り、ウィルドは鎮魂歌を歌い続けている。そのため、手持ち無沙汰になったジルディアスは、大剣を地面に差し、それを背もたれに休憩をし始めた。いつも思うが、こいつは手入れはあんなに丁寧なのに、普段の武器の扱いが雑過ぎる。オリジナルスキル上仕方ない部分もあるが、それでももうちょっと丁寧に扱ってくれたっていいだろ。特に俺とか


 そしてふと、俺はあることに気が付いた。


「ん? レベル上がってね?」

「当たり前だろう。アンデットを祓っているのだぞ?」


 俺のアホみたいな疑問に、ジルディアスはあきれたように答える。へー、なるほど?

 もしかしてだが、今まで出会わなかったものの、アンデットに出会っていれば俺は普通に人間になれていたりしたのだろうか? 相性って大事だな……。

 手に入った新たなスキルポイント。どうすべきか少し悩んだが、俺は小さく頷いて、ジルディアスに言う。


「とりあえず復活にスキルポイント振っておくわ。お前のMP切れたら詰むし」

「いや、光魔法に振っておけ。さっさと町の中に入りたい」

「ああ、そうだな」


 俺はそう言ってステータスを確認する。


【恩田裕次郎】 Lv.21

種族:__ 性別:男(?) 年齢:19歳

HP:110 MP:125

STR:102 DEX:146 INT:148 CON:102

スキル

光魔法 Lv.2(熟練度 172) 錬金術 Lv.1(熟練度 0) 

ヘルプ機能 Lv.1(熟練度 69)

祝福

復活 Lv.3(熟練度 273)

変形 Lv.4(熟練度 192)


 15レベルアップだ。これが効率がいいのか悪いのかよくわからないが、とりあえず、スキルポイントは新たに15手に入った。


 スキルポイントの割り振り方は、どうやら1で1レベル上がるのではなく、1,1,2,2,3,3,4,4,5とレベルごとに必要になるスキルポイントが増えていくらしい。今のレベル6の状態で、レベル4にした変形に4、レベル2にした光魔法に1を使っている。

 とりあえず、範囲回復魔法であるエリアヒールを使えるようにするなら、光魔法をレベル4まで上げなければならない。今の光魔法のレベルが2であるため、後2レベル上げるには、1+2で3消費すればいい。


 問題はその後だ。


「うーん……復活スキルは行使してればレベルが上がるんだよな……熟練度いくつでスキルレベル上がるか知らないけど」

「……その姿で自傷行為を行うのなら、俺は他人のフリをする」

「流石に今この場ではしねえよ。MPの無駄だ。何のレベル上げようか悩んでんだよなぁ……」


 とりあえず光魔法のレベルを上げ、エリアヒールを取得する。消費魔力はそこそこだが、範囲回復であるため、アンデット数体をまとめて祓うことができる。


 とはいえ、本当に何のレベルを上げるべきか。どうせならこれからの旅……といっても、あとはほとんど魔王を倒すだけなのだが……に役立つものが良い。


 そんなことを考えていた俺は、ふと思い出す。


「そういやジルディアス。俺、錬金術持ってんだけど、錬金術って具体的に何ができるんだ?」

「む? 錬金術など習得しているのか? 剣だったくせに?」

「人として生まれ変わるつもりだったんだ、仕方ねえだろ」


 ジルディアスのもっともな言葉に、俺は思わず肩をすくめる。結局のところ、基本的に戦闘能力は皆無でしかないため、俺のステータスは言ってしまえばお飾りみたいなものだ。

 手に職つけたいからと錬金術を選んだが、今の今まで使ったことがなかった。どうせなら今のうちに錬金術を使えるようになっておきたい。使い道があるかどうかはさておき。


 ジルディアスは少しだけ考えてから、結論のみを言う。


「あっても無くても変わらんスキル、だな」

「ふーん……へ?」


 あまりにもあっさりとした答えに、俺は思わず声を裏返らせる。ジルディアスは小さく肩をすくめて。言葉を続けた。


「結局のところ、錬金術のスキルを用いて作成可能なものは、店でも購入可能だ。錬金術のスキルを育てるくらいなら普通に金で買ったほうが手っ取り早い」

「お、おう……思想が金持ちのそれそのものだな……でも、流通があるなら、手に職つけられそうだな」

「ふむ……とはいえ、一定以上の信用が無ければ、錬金術で作ったものなど売れはしないぞ?」

「その辺はまあ、最悪自己消費すりゃいいし」


 俺はそう言いながらも、エリアヒールを詠唱する。光魔法の熟練度はそこそこあるが、それでもまだエリアヒールには慣れていない。できるだけ丁寧に、失敗無いように魔法を使い続ける。


 そして、そんな俺を見て、ジルディアスは思い出したように言う。


「ああ、そう言えば、錬金術で魔法の発動体が作れたな」

「魔法の発動体?」

「お前自身が魔法の発動体だが……それでも、魔力消費を軽減するのに使えるだろうと思うぞ」

「どうやるんだ?」

「俺が知っているわけがないだろうが」


 あきれたように言うジルディアス。その言葉に、俺は肩をすくめることしかできない。


 でも、魔力消費を軽減できるのか。

 なら、変形にスキルポイントをふって、残りで錬金術を上げるか。


 そう思ったら後は速い。


【恩田裕次郎】 Lv.21

種族:__ 性別:男(?) 年齢:19歳

HP:110 MP:125

STR:102 DEX:146 INT:148 CON:102

スキル

光魔法 Lv.4(熟練度 172) 錬金術 Lv.3(熟練度 0) 

ヘルプ機能 Lv.1(熟練度 69)

祝福

復活 Lv.3(熟練度 273)

変形 Lv.8(熟練度 192)


 これで残りスキルポイントは3。変形を上げるために少しだけ残して、今のところはこれでいいだろう。


 そして、錬金術のスキルを確認する。


「んー……あー、なるほど、発動体に刻印を描けばいいのか」


 スキルのレベルを上げてから脳裏に流れ込んできたのは、複数の刻印。発動体に刻印を描けば、仕様魔力の軽減や威力増強、精密操作などの補助ができるようになるらしい。


……あれ、待てよ?


「……ん?」


 もしかして、もしかするのか?

 俺は、そっと自分の腕に目を向ける。聖剣である俺は全身魔法の発動体となっている。使用する魔力を軽減するなら、多分かける。問題は、どうやって書くか、である。


「なあジルディアス、万年筆貸してもらえるか?」

「……一応聞いておくが、何に使う気だ?」

「腕に発動体の刻印かけば、杖代わりにできそうだと思って」

「失敗したらどうなると……いや、お前だから大丈夫か」

「扱い酷くない?」


 ちなみに、魔法陣の刻印に失敗すると、刻印した対象は粉砕される。簡単に言うと、もしミスれば俺の腕は吹っ飛ぶ。

 とはいえ、スキルに復活を持つ俺にそんなデメリットは関係ない。単純にメリットだけになるなら、刻印を刻まない理由がない。


 あきれた表情を浮かべて万年筆を投げ渡してきたジルディアスに短く礼を言い、俺は左手に刻印を刻む。


 そして次の瞬間、左手の手の甲が大爆発を起こした。

 あまりの威力に、ジルディアスは思わず表情を歪め、怒鳴る。


「万年筆は無事か?!」

「普通俺の心配しない?」


 光の粒子に変わった左手。もしかして、俺の負傷、万年筆以下だったりする?

【錬金術での魔法の発動体作成】

 基本的に、魔法の発動体は素材さえあればそれで充分である場合が多い。それでもなお威力を向上させたいと思った錬金術師たちは、魔法の発動体に刻印を刻み、威力を上げることを思いつく。

 結果として、失敗すれば(大抵)高級な発動体が文字通り吹っ飛び、成功すれば大幅強化と言うギャンブルじみた発動体作成が出来上がった。


 なお、成功率はスキルレベルと熟練度に依存している。

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