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8話 魔王と花嫁の結婚式(5)

前回のあらすじ

・ウィルド「服になってあげる」

・ジルディアス「貴様は絶対そこではないだろう!!」

・ユミル「行こうジル。夫婦になろうよ!」

 つつがなく進んでいく結婚式。ウィルドが変形した礼服を身にまとった恩田も、招待客席で二人の幸せそうな姿を見ていた。

 そして、誓いの言葉を紡ぐ直前で、ついにバルトロメイが仕掛けた。


 元イリシュテアの祓魔師の神父が、二人に対し宣誓の言葉を問おうとしたその時、バルトロメイが招待客席から口を開く。


「面白いことをするね、我が甥(ジルディアス)。司教を差し置いて一介の神父に宣誓するのかい?」

「……バルトロメイ殿。貴方に申請することはできなかったようなので。貴方を見届け人とした宣誓の儀式の予約は向こう20年は埋まっていたはずだ。それに、今宣誓を頼んでいる神父はフロライトで懇意にしている神官だ」

「今暇なように見えないなら、君の眼は節穴だと思われるが。そして、恩人だというが、それがどうした? これだけ盛大な式を挙げていながら、祝福がしょぼいと言われかねんぞ」


 相変わらずの皮肉っぽい物言い。眉をしかめるジルディアスに、バルトロメイは肩を竦めて言う。


「めでたい結婚式を崩壊させるほど腐った司教ではないさ。地獄に突き落とすなら幸せの絶頂から叩き落すに限る。何年も前から計画していた結婚式ならまだしも、急造の結婚式で未婚のうちに土をなめさせても面白くはないだろう」

「……間違いなく本心だな。悔しいことに同じ立場なら俺もそう思う」

「余計なことを言うのはフロライトの血か? それとも嫌味ゆえのローゼの血か?」


 薄く目を細めたジルディアスのその言葉に、バルトロメイは微笑んだまま口元だけをひきつらせる。

 小声のやり取りを見ていた招待客たちは事情を知るものはやや警戒し、まったく知らないものは親戚なのに先生の儀式を任せないらしいジルディアスに眉をしかめる。


 数秒考えたジルディアスは、ぐっと眉をしかめ、それでも口を開いた。


「余計なことをしたら殺す。骨一本も残さん」

「はっ、姉と同じ末路をたどれるなら光栄だね。__安心しろ、私は司教だ。お前と違って理性的なんだよ」


 小声で言った彼は、悠々と席を立ち、紫色の法衣をはためかせ、宣誓を行うための荘厳な机……宣誓台の方へと歩いていく。

 宣誓台の前に立っていた神父は困惑したようにバルトロメイとジルディアスを見比べる。神父の助けを求めるような視線を向けられたジルディアスは黙って首を横に振る。


 神父は眉を下げながらも、来客たちに一礼して、宣誓台の前から退いた。


 祓魔師の神父と入れ替わりに宣誓台の前に立ったバルトロメイは、宣誓台の上に置いてあった祝詞の書かれた紙……もとい、カンニングペーパーをつまむと、指ではじいて空に放り投げ、無詠唱で光魔法を発動させる。


 雷の魔法であるライトニングを応用し、カンニングペーパーを光で灰も煙も炎さえも上げずに抹消する。数秒足らずで光に消えた祝詞を見て、ジルディアスはかすかに警戒したような面持ちでユミルの手をぎゅっと握りしめる。


 しかし、バルトロメイは依然として蛇のような赤色の瞳で優しく微笑んだまま、誓いの言葉を口にし始める。


「大いなる創造神エシス様の導きにより、フロライト公爵の子にして勇者であり魔王でもある夫ジルディアス、神代より導かれ光の妖精の加護を受けた妻ユミルの二名は出会いを果たした。司教バルトロメイ・ローゼの名において、御神の奇跡を祝福するために、質疑を行う。虚偽を口にすることのないように」

「はい、御神の名前において、誓います」

「……はい、御神の名前において、誓う」


 美しい笑顔のまま紡がれる、バルトロメイの言葉。さすがは司教と言うべきか、祝詞はカンペがなくとも完全に頭に入っているらしい。

 あらかじめ結婚式の流れを勉強していた恩田は、理解しかねるバルトロメイの行動に警戒しつつも、事実上ウィルドの生みの親であるエシスの名前が出てきたことに若干驚いていた。


 ウィルドは楽しそうにバルトロメイとジルディアスとユミルの様子を見ている。一応、彼が楽しそうならまあ、そこまで危険はなさそうだとは思える。少なくとも魔王関連はまったくもって大丈夫だ。……いや、平気で魔王のかけらを人にぶち込むゲイティスが頭がおかしいのだが。


 紫の法衣が美しく揺れる。麗しい金髪はまるで黄金の満月を紡ぎあげたかのようにまばゆく、そして繊細である。血のような赤い瞳はジルディアスのように苛烈ではなく、どことなく蛇を思わせるような冷徹さがある。司教ゆえか、ローブの下は戦士の肉体ではなく、色白くほっそりとした腕や首はどことなく中性的な雰囲気さえある。


 バルトロメイは、低く荘厳な声で、二人に質疑を行う。


「夫となる者、ジルディアス。名と身分を」

「ジルディアス=ローゼ=フロライト。アルバニア・フロライトの長子にして、元はセントラル近衛兵兵長であり、第四の聖剣の勇者であった。現在は次期公爵として職務に準じている」

「妻となる者、ユミル。名と身分を」

「……ユミル。家名はありません。父グレンジャーと母ユーエンの三女にして、元は第百の聖剣の勇者の従者でした。現在は治療院の職員として職務に準じています」

「よろしい。二人とも虚偽を申していないことを確認しよう」


 淡々と名前と身分を名乗ったジルディアスとユミル。ユミルの経歴を聞き、何人かが眉を上げるも、彼女は気にせずに前を向いた。この際身分差などどうだっていい。ユミルがジルディアスを愛する気持ちは、誰にだって負ける気はなかった。

 バルトロメイは左手の中指に装着していた指輪を軽く撫で、短く詠唱する。


「光闇混合魔法【ホーリートゥルース】」


 短い詠唱の直後、二人に光が注がれる。その光に、ユミルはキョトンとしていたものの、ジルディアスはぐっと奥歯を噛みしめた。その様子に、恩田とシスは小さく息をのんだ。


 依然として優しく口元だけ微笑んだバルトロメイは、笑顔で言う。


「よろしい。虚偽はなかったようだ。__この魔法は質問に対する回答が正しければ回復魔法を、虚偽であれば闇魔法によるデバフが発生する。デバフの程度は虚偽内容の重大性に合わせ変化する。過去には身分を偽って高位のご令嬢と婚約しようとした平民の男が失明したこともある。ぜひ気を付けてくれたまえ」


 光と闇という相反する魔法を混合して発動させるという離れ業をあまりに簡単に発動させたバルトロメイは、その瞳に隠し切れない愉悦をにじませた。それもそうだろう。現在のジルディアスはアンデットである。光魔法による回復は、すなわち攻撃を意味する。


「バルトロメイ……!」

「__すまない、約一名、私からの祝福が攻撃に転じてしまう人間がいたようだ。しかしだな、我が甥(ジルディアス)よ。貴様も分かるだろう。高位貴族の結婚には【ホーリートゥルース】の呪文はたびたび使用される。欠かすわけにもいくまい?」


 低く声を上げるジルディアスに、バルトロメイは良い笑顔で言う。

 バルトロメイはジルディアスともあろうものがこんなちょっとした癒し程度の光魔法で死ぬとはかけらも思っていなかった。彼を確実に抹殺するには、軽い出力の光魔法では無理だとわかっている。つまり、これは結婚式を破滅させるための罠ではなく、ごくごく単純な嫌がらせにすぎない。


 それが分かったジルディアスは、額に青筋を浮かべながら口を開く。


「……いいだろう、続けろ」

「配慮いただきありがとう。儀式が済んだら、回復魔法をかけてあげよう。ずいぶん痛そうだったからねぇ?」

「いらない気遣いだ。水の回復魔法なら俺でも使える」


 凶悪な表情を浮かべたジルディアスは、赤色の目でバルトロメイの目をにらむ。その殺意を笑って受け流し、バルトロメイは気兼ねなく続きの問答を始める。

 司教の瞳は純粋な嗜虐心に満ちていた。


「さて、質問を続けようか。__妻となる者、ユミル。貴方は今日という日を迎えるまで、欠かさず神に祈りを捧げましたか?」


 この質問に、恩田や参加者たちは小さく目を見開いた。

 結婚式で行われる問答は、多くの場合5つ程度。その五つも大体テンプレートが決まっており、一番最初の身分を問う質問以外ははいかいいえかで答えればいいだけの儀式なのだ。ただし、その儀式において返事が嘘であると罰があるため、花嫁と花婿はかなり緊張した式となるのだが。


 だからこそ、先ほどのバルトロメイの質問は、かなり意地が悪い。ジルディアスは神は信仰してはいるものの、そこまで熱心ではない。さらに言えばユミルは元光の妖精の花嫁だったこともあり、信仰心はほぼない。

 だからと言って、「いいえ」とだけ答えるわけにもいかない。


 ユミルは小さく息をのむ。それでも、ジルディアスの左手をぎゅっと握りしめ、正しく答えた。


「いいえ。一時期信仰を途切れさせた時期がありました。……現在は創造神様と時代の神ウィルド様を信仰しております。神の代理である妖精は信仰しておりません。今も、これからも」


 ざわりとさざめく会場。嘘をつけばその身に災いが降りかかるとしても、ここまではっきりと言い切るには、なかなか度胸がいる。そして、妖精を信仰していないことをはっきりと言い切った。その事実も、多くの人には驚きを与えた。


 祓魔師のシスは、少し複雑な表情を浮かべている。神隠れた今、プレシスの人々の信仰の対象は主に妖精である。地域によっては祖先神や精霊を信仰している場所もあるが、多くは妖精信仰である。そんな中で、彼女は真っ向から妖精信仰を否定した。

 たおやかに微笑んだバルトロメイは、大仰にうなづくと、言葉をつづけた。


「なるほど。夫となる者、ジルディアス。貴方はどうですか?」

「ユミル同様、創造神への祈りは途切れているときもある。しかし、重要な戦前戦後や食前就寝前などに祈りは適宜行った。が、妖精は信仰していない。現在は新たな神ウィルドを信仰している」

「よくわかりました。両名、手を前に。__光闇混合魔法【ホーリートゥルース】」


 再び訪れた光の祝福。しかし、光はジルディアスを祝福することはない。

 苦痛に表情だけゆがませて、声を上げずに耐える魔王に、依然としてバルトロメイは笑ったままだ。


「よろしい。虚偽はなかったようだ。__夫となる者、ジルディアス。貴方たちは妖精様を信仰していないようですが、今後は神の教えにしたがった生活を送りますか?」

「その神とやらが妖精であるならば従うことはないだろう。しかし、教義に従った祈りや礼拝は行うつもりだ。フロライト領内で信仰の自由を制限するつもりはない」

「妻となる者、ユミル。貴方は妖精様を信仰する予定はないとのことですが、今後は神の教えにしたがった生活を送りますか?」

「ジルディアス同様、神が妖精ならば逆らうこともあるでしょう。ですが、他人の信仰を侵害することは決してしません。また、創造神様と新たな神様には従うつもりです」

「……光闇混合魔法【ホーリートゥルース】」


 信仰を問うバルトロメイの質問に答える二人。再び降り注いだ光の祝福に、ジルディアスは表情をひきつらせつつ耐久する。

 その様子を見ていた恩田は、小声で自分の服……もとい、ウィルドに問いかける。


「なあ、ゲイティスの奴が魔法を自分で作る? みたいなことをやっていたんだが、俺もできるか?」

「うん? 無理じゃないけど、神語をある程度理解していないと難しい……って思ったけど、よく考えたらユージはどの言語も理解できていたね。なら大丈夫。神語魔法を詠唱する感じで単語をつなぎ合わせれば、魔法を作れるよ」

「ざっくりだな……でもまあ、それなら行けそうだ」


 ウィルドの説明を聞き、恩田はすぐに目を閉じて脳裏に神語の単語を思い浮かべる。そして、思いついた単語をウィルドに呟きながら、全体的な魔法の方向性を決める。そのうえで必要な魔力量を考えたときに、恩田は思わず机に突っ伏しそうになった。


「待ってくれ、神語魔法、必要魔力量やばくないか?」

「うん? 体を神様に作ってもらった君なら、現代プレシスでは必要魔力量がトップクラスに少ない方だよ。まあ、単純にお願い事を実現できるだけの魔力が大気中に満ちていないのが原因だから、必然的に自分のMP使わないときついかな」

「……ウィルドのMP借りてもいい?」

「権限が変わって僕のMPは世界の魔力に置き換わってるから、別にいいけどあんまり使わない方がいいよ」

「わかった。後でMPポーション使うわ」


 黒髪をわしわしとかきながらそう言った恩田は、ちらりと視線だけで後ろを見る。魔法の発動体となっている箒は壁に立てかけてしまったため、取りに行ったらかなり目立ってしまいそうだ。ウィルドは原初の聖剣であるため、彼をそのまま発動体にすることも考えたが、少し威力増強の刻印が欲しい。


 そこまで試行したところで、隣の席のアルガダ子爵が眉をしかめてトントンと恩田の脇腹を太い指でつついた。


「ユージ殿。行儀が悪いぞ。儀式中なのだ、おとなしくしたまえ」

「そりゃそうなんだが……いや、行儀の悪さで言えば、クーランの方がやばくないか? アイツそろそろ寝そうだぞ」


 ど派手な民族衣装を身にまとったクーランは儀式に飽きたのか、足を組んで薄く目を閉じている。頭は船をこきはじめているので、おおよそ眠りかけていることは来客席からだと普通に見えた。

 なお、隣の席のアーティはついにクーランの槍を間近で見ようとするあまり席を立ちかけ、アルガダ子爵に首根っこをつかまれている。時間の問題だとは思っていたけど、本当にやるとは思わなかった。


 サンフレイズ平原の英雄の姿を見たアルガダ子爵は頭を抱えつつ、恩田に問う。


「それで、どうしたユージ殿。貴殿が理由もなく騒ぐとは思えない」

「それなんだが……」


 アルガダ子爵に質問された恩田は、素直に事情を話す。すると、アルガダ子爵は納得したようにうなづき、そして、首をかしげて問いかける。


「ユージ殿が今着用しているのは、ウィルド殿なのだろう? なら、ウィルド殿を発動体にすればいいのでは?」

「強化の刻印が欲しいんだ。単純な詠唱だと効果時間を持続できそうもない」

「……? ウィルド殿に頼めばいいのでは?」


 キョトンとした反応をするアルガダ子爵。恩田が首をかしげている間に、アルガダ子爵の言わんとすることを理解したらしいウィルドが、目を輝かせる。


「ああ、そういうことかい! それなら、できるよ!」


 ウィルドはそういって恩田の服の左腕部分を変形させ、いつも恩田が左腕に入れていた入れ墨に変貌した。黄金のガントレットのような状態になったウィルドに恩田は目を丸くし驚く。

 それでも、これで刻印による強化も可能になる。


 恩田は不敵に笑み、左腕のガントレットに短く言う。


「ありがとう、ウィルド。これならいける……!」


 細やかな文様のあるガントレットを撫で、恩田は新たな魔法を紡ぎだす。


「属性反転、対象固定、効果持続、【リバースマジック】!」


 紡いだ強化魔法は、派手なバルトメロイの回復魔法の輝きに隠され、それでも地味に効果を発動させた。


「妻となる者、ユミル。貴方は見返りを求めず、無条件に相手を愛しますか?」

「はい、誓います」

「よろしい。虚偽がないか確認しよう。光闇混合魔法【ホーリートゥルース】」


 降り注いだ光の祝福。生者だけをいやすその祝福の光は、死者であるジルディアスには攻撃になる……はずだった。


「?!」

「……ふむ。」


 強化魔法がかけられたことには気が付いてはいたものの、その効果に驚き赤い瞳を丸くするジルディアス。そして、小さく声を上げるバルトロメイ。

 確かに、光の祝福はあった。にもかかわらず、光の浄化はジルディアスを傷つけることなく癒した。


__裕次郎か?


 ジルディアスは強化魔法の使い手を容易に予想できた。そして、先ほどまでは嫌がらせが出来て上機嫌そうだったバルトロメイが蛇のような瞳に嫌悪感を浮かべたことで、その予想は確信に変わった。


 祝福でダメージを与えられないと察したバルトロメイは、いちいち魔法を使うのが馬鹿馬鹿しくなったのだろう。先ほどまで長ったらしく質問していたのが嘘のように、新郎新婦にかける最後の質問を口にした。


「……夫となる者、ジルディアス。貴方は病めるときも健やかなるときも、悲しき日も喜ばしい日も、妻となるユミルを支え共に生きることを誓いますか?」

「はい、誓います」

「妻となる者、ユミル。貴方は病めるときも健やかなるときも、貧しい日も富む日も、夫となるジルディアスを敬い共に生きることを誓いますか?」

「はい、誓います」


 はっきりと、まっすぐと紡がれた二人の言葉。

 その言葉を聞き、バルトロメイは深くため息をつき、最後の呪文を詠唱した。


「……二人の信仰心が薄くとも、司教バルトロメイの名前の下に二人の婚姻を認めよう。死がふたりを分かつまで、新たな夫婦に祝福を。【エンゲージ】」


 紡がれた光魔法。本来ならほとんど効果のないエフェクトだけのような見た目だけの魔法は、性格は腐りきっていても実力だけは本物なバルトメロイによって、本物の祝福に変貌する。


 招待客だけでなく、参加者たちにも降り注いだ光の粒子。それは、ちょっとした体の不調を……例えば気になっていたささくれだとか、ほんの少し痛んでいた奥歯の痛みだとか、滑って転んで作ってしまった擦り傷だとかをたちどころに癒し、同時に気分を盛り上げる。

 大規模な魔法の発動に、公爵家長男の結婚式を見物しに来ていた人々は歓声を上げる。人々は手に持っていた花びらを投げ上げ、紙吹雪を投げ上げ、婚姻の成立を祝う。

 同時に、諸外国の招待客はイリシュテア神殿が正式にジルディアスとユミルの婚姻を認めたことを理解し、顔を青ざめさせたり考え込んだりと百面相を始めた。


 意外にもあっさりと認められた婚姻に不思議そうな表情を浮かべるジルディアスに、バルトロメイは不機嫌そうに舌打ちをしながら証明書を二人の前に手渡す。


「さ、これに血印を。証明書はイリシュテアで保管してやる」

「……今晩は魔王が王都に襲撃でも仕掛けるのか?」

「魔王はお前だろうが」


 茫然と呟くジルディアスに、バルトロメイは吐き捨てるように言いながらナイフを手渡す。美しい彫刻の施されたナイフを見たユミルとジルディアスはたがいに目を合わせ、受け取ったナイフを使って親指を薄く切ると、書類に血のにじんだ親指を押し当てる。


……こうして、魔王と花嫁は、結婚した。

【リバースマジック】

 恩田が神語魔法で新たに作り出した魔法。対象へ降り注ぐ魔法の属性を反転することができる。

 ちなみにMPを増加して使用することで魔法の効果を反転することもできる。即死魔法かけたと思ったら回復しているタイプの理不尽。これを使用すると、ジルディアスにも光魔法の回復魔法が使用可能になる。魔王に回復をつけるなとあれほど……

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