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第4話 遅すぎた救世主

ネットフリックスやアマゾンプライムもhuluみたいに映画の配信終了予定日簡単にわかるようにしてほしい

 クレーターからほんの二歩分横にいた目の前の男は、ただ茫然と立ち尽くした後、怖気図いて俺のもとから逃げ出した。


「お、おい、なんだかヤバい! 逃げるぞ!」

「バカ野郎! せめてあいつだけは殺しとかねェとボスに示しがつかねェだろ!!」

 リーダーらしき人間が、そう言って指さした先にいた人物。


「や、やめてください殺さないでください!! 命ばかりはお助けを!!」

 豪華な馬車だったものの破片と一緒に吹っ飛ばされ、今必死で命乞いをしている俳優・ルドルフ・フェアバンクスだった。

 フォークス王国を代表する俳優とは思えない情けない命乞いぶりは、少し滑稽なくらいだった。見ていて面白いので、少し放置してやろうと思ったくらいだ。

 

 そんな考えもほどほどに、再び魔法―――その時は感覚だけで放っていたが、どうも魔力を爆薬に変化させる爆発系統の魔法らしい―――を放ち、ファミリーのリーダーらしき男の真横に再びクレーターを穿った。


「そいつに手を出すな」

 助けたことに、特に理由はなかった。

 むしろ金も名声も持っている俳優なんて、少し前の俺にしてみれば襲われたほうが気分がいい存在だったはずだ。

 それでもこいつを守ろうと思えたのは、俺の命を奪おうとした連中への怒りが強かったからだろう。ついさっきまで死んでも別にいいと思っていたのに皮肉な話だ。

 ミルズ・ファミリーの連中は、驚愕しながらクレーターに目をやると、負け惜しみの一つも言うことなく、そそくさと引き連れていた馬に乗り、逃げ去っていった。


「……さて」

 現状把握に戻る。どう考えても今の俺の状況は異常だ。

 まず『映画士』ペンダントを投げ捨てて首都から離れた俺はただの無職の宿無しで、あんなものを使えるバケモノじゃない。そもそも『映画士』―――優れた『俳優』や『監督』だったとして、あんな地面を抉るような魔法は放てない。

 心当たりになるものを探すようにジャケットやズボンのポケットを探っていると、ジャケットの内ポケットの奥底で玉のようなものに触れた。

 俺がポケットから取り出したのは、とおの昔に使わなくなった、『戦士』のペンダントだった。

「まさか……」

『映画士』のペンダントと同じ要領で指で触れて、ペンダントから空虚の中にスキルウィンドウを映し出した。


 名前:マキノ・チュウジ

 年齢:25

 ジョブ:勇者

ジョブレベル:500

《スキルレベル》

 剣術:300

 槍術:300

 弓術:300

格闘術:300

魔法:300

防御:300

 索敵:300

 


 ジョブレベルも各主要スキルレベルも、上限値を示していた。

 魔王を倒した勇者たちが経験したといわれる、《覚醒》というやつかもしれない。

 それを見た俺は、思わず乾いた笑いを漏らしていた。

「なーんで今なんだ……」

 十年以上前にこのスキルがついていたら、俺はどんな人生を歩んでいただろう。

 だが今の時代は、人々に興味があるのは武力ではなく映像なのだ。

 かろうじて『俳優』の護衛を任される、という仕事はあるが、待遇は『俳優』に比べるといいとは言えないし、命懸けゆえに安定も期待できない。

 魔王戦時代に『戦士』として手柄を立てた『退役戦士』なら国から年金・補償金が支払われるが、当時戦士として全くの無能だった俺に手柄などあるわけもない。

 遅すぎた救世主、という言葉がしっくりくる覚醒だった。


 悪党だったら、こういう時世界征服のために暴虐の限りを尽くそうと決意するところだろうが、生憎殺人や略奪にはあまり興味はない。

 今の時代に、ただの落ちこぼれがいきなり手にするには持て余すしかないであろう強大な力を得たことに途方に暮れていた、その時。

「あのさ、キミ」

 急に話しかけてくる声が聞こえた。

 振り向いた先にいたのは、映画スター・ルドルフ・フェアバンクスだった。

「助けてくれてありがとう、でさ」

 貧乏人の俺に助けてくれた礼をするなんて、思ってたよりも律儀な奴だな、と思っていたら、話に続きがあるようだった。

「僕のボディガードになっとと、な、なってくれないか?」

「落ち着け」

 俳優が噛み散らかすってどういうことだよ。


次回、今週中に上げます

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