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この親子にリモートワークは必要ない  作者: かいみん珈琲
2/3

2/格差社会


昔からSFロボットやファンタジーが大好きでした。


でも、たまには現代を軸にした社会風刺も書きたい今日この頃。


――という事で今回のテーマは『家族愛』です。



プロット段階では、短編にするつもりでしたが……


つい楽しく筆が進み、もしくは世界観を膨らませすぎで、


軽い連載モノになりました。


気軽に楽しく読んでいただけると幸いです。

●路地裏/とある飲食店


 4車線ほどの大通りに面した、ある飲食街。

 その裏手、とある飲食店から初老の男が出てくる。


「その、ありがとうございました」

 と、裏口の前で会釈をする。

 白い調理服を着ている店員が、ゆっくりと扉を閉める。


「……はぁ……」

 柿本トシキ、巻き肩ぎみに歩きだす。

「……これで3件目……次は1駅先の――」

 と、上着からメモ帳とペンを取り出す。

 

 ヒモの栞を目印にページをめくる。

 見開きになった、そのページには10件ほどの飲食店の名前が綴らている。

 そのうち、左上の2件分は横線で何度も消し込まれていた。

 歩きながら、3件目の名前を消す。


「……おっと、いけない……」

 途中、メモ帳から黄ばんだ紙きれが落ちてしまう。

 幸いにも落ちたコンクリートは乾いていたので安堵しながら拾う。 


 所々、擦り切れたその紙の上には大きく『おとぅさん おりがとぅ』とある。

 下の文字は、かすんでしまっていたり、ミミズのような文字だったりとうまく解読できない。

 トシキ、それを丁寧にメモ帳にしまった。



●柿本トシキの自宅(夜)


「結局、全部の店を周ってもしっくりこなかったな」

 と、勢いよく発泡酒を流し込む。


「はぁ、情けない……」

 ――こんな事になるならば、色々と準備しておくべきだった。

 柿本トシキは下唇を噛みしめる。


 

××××× ××××× ×××××



 十数年前、この国の政府は”雇用労働禁止法”を制定した。

 AIによる作業自動化。

 AIによる労働力の確保。

 これらを推進する政府により、肉体労働は無価値になった。


 買い物、運転、食事、運搬、仕事など。

 すべてAIやロボットがこなす時代。

 トシキが生まれた頃、夢見ていたオートメーションな時代になったのだ。


 だが、この”雇用労働禁止法”施行でトシキの生活は一変した。

 当時、老舗の定食屋を営んでいたトシキ。

 当然ながら政府の圧力のもと、AIによる自動化を無理やりに組み込んだ。


 働いていた従業員も解雇した結果、成果はほとんど出なかった。

 AIロボットの維持経費が膨らみ、利益を食いつぶす形になったからだ。

 人情を求めていた常連達も足が遠のき、つい半年前に自分の店を閉めた。

 

 ――だから、現在は無職。 

 そして、これまで磨いてきた技術を生かすため、新しい就職先を探す事にした。


 しかし、現実はそう甘くなかった。

 ”雇用労働禁止法”がそれを拒む。

 それは、会社や個人店に雇われる事を禁止する悪政。

 社長などならともかく、社員やパートタイム・アルバイトとしても働く事はできないのだ。



××××× ××××× ×××××



『えー、ミュートちゃんが音楽に興味を持ったキッカケは何でしょうか?』

『キッカケは母の影響です。母は小学校で音楽を教えてました。そしたら私も小さい頃から作詞を書き始めたって感じです』

『へー、素敵なお母さんですね』


 酒だけだと寂しいので、垂れ流していたテレビ。

 司会者や少しぼやけた娘の姿が交互に映る。


『なんでも1年前に自分の作詞作曲した音楽が、情報共有サイト”シェアチューブ”で注目を浴びたのがデビュー当初だったと聞きましたが?』

『そうですね。あの頃は嫌な事が多くて、無我夢中で曲を書いていました』

『ありゃま、そうなんですか。でも、その割にはとっても清々しい曲ですよね。 私の息子も大好きで、家族旅行の間ずっと聞いてて会話してくれないんですよ?』

 と、スピーカーから笑い声が溢れる。


『やっぱりこうした愛好者パトロンのおかげでミュートちゃんの今日があるんですね』

『はい、お陰様で5月頭には愛好者数(パトロン数)が30万人を超えました! 応援してくれている方には感謝の気持ちしかありません!!』

『30万人、あめでとう! 一気に社会カーストの中堅クラスか! すごいね!!』


 ――この様変わりした時代には、もう1つのシステムがある。

 それが”愛好者パトロン制度”。

 愛好者パトロンとは、要するにアイドルや著名人を応援している国民ファンの総称である。


 この愛好者パトロン有無、その数で人の価値や資産、稼ぎが左右されていまうのだ。

 政府が管理する情報共有サイト”シェアチューブ”。

 これを元締めとした、国政の1つである。

 この”シェアチューブ”を通してのみ、稼ぎや愛好者パトロンを増やす事ができる。


 そのため、この国の人々は一人でも多くの愛好者パトロンを生み出すために余念がない。

 

 また、彼らは決して働いて稼ぐのではない。


 自分が学んだ事を、他者と共有する事に等価な価値――お金や愛好者パトロンを生み出している。


 トシキが信じてきた時代背景を真っ向から否定しているのだ。

ここまで読了ありがとうございました。


個人的には、ちょっと中身がなさすぎな印象がありますが……


「不器用な父親」と「夢にまっしぐらな娘」とのぎこちない仲を楽しめましたのでヨシ。


今後、物足りなければ他の作品で世界観共有してみようと思います。

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