実際にあった恋愛話
これは僕が、実際に体験した、恋愛物語である。
「隣の子かわいいね。」
「やばいこの人は誰だ...。」
約五年ぶりに交わした言葉がこのような言葉だったなんて。それから約一週間後の僕からすれば失礼な話だ。だがその時は本当に思い出せなかった。もちろん罪悪感が残るだけだった。僕はチームメイトとインスタグラムでライブをしていた。確かに自分のチームメイトは美人だと思う。だがしかし、
「アホでバカなやつより隣の女の子映せ。」なんて言うような生意気な人は、僕の記憶の中では中学生の後輩くらいだった。僕はその時、正直な気持ちは「また面倒な人に絡まれた」の一言でしかなかった。それがまさかこうなるとは思いもしなかった。
次の日に、そのライブを見ていた中学の同級生からインスタグラムであるダイレクトメールが送られてきた。その内容というものが「中学の時転校したあいつがインスタグラムの人だ」というものだった。僕の奥深くにある記憶が掘り返されていく。僕は当時、その子と仲が良かったという記憶はあった。僕はすぐに謝ることしか考えてなかった。そして勇気を出し、怒られること承知でダイレクトメールを送り、謝った。そこから僕たちの第二のステージが幕を開けたのだ。
ダイレクトメールでは、話が次々と発展していった。小学生の時の話、中学生の時の話、転校した後の話、高校生になってからの話など、思い出話や近況報告などをした。そしてお互い、徐々に心を開き出して、僕たちはそれぞれの人との付き合い方について語り合うようになった。彼女も自分も少し似たようなところがあって、でも違うところもあって。お互いが、お互いの人付き合いについて話し合い、考えていた。そんな中話は恋愛観へと移って行った。話が進むにつれて、自分の感情が変化している事に気づいた。次第にもっと話して「彼女のことを知りたい」という気持ちが強まっていき、僕は異性として、気になるようになってしまっていた。またそんな中、自分の中で感情的に記憶が蘇ってきた。
「彼女が好きだった。」...と。
そんな記憶が戻ってきたある日、彼女は僕に提案したのだ。「電話をしよう」と。基本的には自分は電話はしたくはないのだが、久しぶりであるという事もあり、声を聞いてみたくなり、自分は電話に出る事にした。
僕「もしもし。何があったの?」
「あーそれね、あなたが話してって言ったんだよ。」
「僕は教えてって言われたからそう言っただけ。」
「僕のせいではないけどこれからはしないよ。」
「分かった。」
「分かったって。というか今駅のホーム?」
自分の受け答えはこんな感じだ。その時声フェチな僕はすごく思った。「この人の声すごく素敵だ。」と。澄んだ声に、流暢な話し方。それだけで自分の心は大きく揺らされるような感覚になった。
「きっとこの人を守ることが出来たら僕は幸せだろうな。」
元々のクラスメイトに対して、なんて感情を持っているんだと捉える人もいるかもしれないが、そういう問題ではない。僕はその時、揺らせれている心は、ある一方の気持ちに固めさせられた。
彼女が好き...。ただそれだけ。でもそれが大きい。徐々に徐々に自分が変化して、いつの間にか彼女に自分の心は盗まれてしまっていた。
僕は中学生の頃から、どちらかというとリーダー的なことをしても、いじられるキャラになっていた。中学生の時は、半分以上は小学生の時と同じメンバーで、新しいメンバーも自分は好きだからこそ、楽しくて、みんな好きだった。ただ一人を除いては...。彼女にはまだ言っていないが、このキャラを案の定、自分の嫌いな人に悪用されてしまった。僕は高校一年生の時、僕はいじめに遭ってしまった。高校二年生になるまでに収まる事には収まった。だが、僕は変わってしまった。人と話す事自体が嫌い、極力話しかけないでほしい、人と会いたくない、一人になりたい...。周りには病んでると言われる。もちろん根暗である自覚はある。ただし、彼女に対しては違った。いや、彼女は僕を変えたのだ。僕が彼女に対する気持ちを。彼女に対しては、僕は話したい、話しかけてほしい、会いたい、一緒に居たい、そして何より、「好き」という感情が芽生えている。話せば話すほど、どんどん彼女のことが好きになる。そしてふとした時、声が聞きたくなる。そんな風に自分の心に、一筋の光を差し込んでくれたのだ。
また、彼女は僕に「電話がしたい」と言ってくれた。僕も彼女の声が聞きたかったので、もちろん快諾。結論から言うとそれは叶わなかった。しかし、自分は彼女の都合もあることは分かっていたので、それに関しては追求せず、またの機会にという事にした。それも次の日にしようとすぐに決まった。
そして二人にとって大きな動きが出てしまったのはここからだ。
それは僕に対して送られてきた「私はどれでしょう」というまあ小学生がしそうなクイズをしてきた事だ。顔も加工で隠されている。内心「中身は変わってないな」「わかるわけないだろ」となっていたがやってみる事にした。
結果は見事に不正解。しかも二連続...。五人しかいない中で二回も外してしまうとは、「なんで想いを寄せる人すら当てられないんだ。」という悔しい気持ちと、「悲しんでいるのではないだろうか。」という傷つけてしまったという罪悪感の二つが、自分の心の中を交差している。
なんども謝って許してもらえるように、自分は「許して」と連呼していた。ただ、僕は彼女の機嫌を損ねてしまった。何を言っても許してくれない。謝っても、条件を出しても...。自分にはどうすることもできない...。彼女はショックすぎて立ち直れないかも、とまで言っている。
僕 「毎日電話していいから許して。」
彼女「いやだ。」
僕 「じゃあどうしたら許してくれる?」
彼女「許さん。」
そこで僕はある考えが過ぎった。
僕 「僕今思ったんだけどさ。」
彼女「なに?どうしたの?」
僕 「僕のこと好きになった?笑笑。」
彼女「うん。」
...え?...急に何を言い始めるんだ。
唐突に好きになったと言われたのは、流石にびっくりして信用出来なかったのだ。何度もそこで聞いた。冗談の好きなこの人は、友達としてのことをきっと言っているんだろう、と。そこからは僕の追求の時間だ。動揺も隠せないまま追求した。何を言っているのか分かっているのか、そしてどういう意味で言っているのか。
僕 「友達として?異性として?」
彼女「君って異性じゃないの?」
自分の心の中「そういうことじゃないだろう!」
僕 「友達として?恋愛対象として?」
彼女「二番目...。」
自分の中では唐突のカミングアウト。正直言って嬉しかった。ただその時はまだ状況は飲み込めてなかった。ただ落ち着いてよくよく考えると、好きな人に当ててもらえないって確かに傷つくよなぁ、と。全ての原因は自分が生んでしまっているが、忘れていたような人が、その人の心を奪えたなんて、自分にとっては衝撃でしかなかった。五年ぶりの再会から、このような話まで発展するとは思いも寄らなかった。
最初に書いた約一週間後の僕とは今の僕だ。五年以上の前の僕、一週間前の僕、そして今の僕。どの僕は全く別のことを考えていて、でも同じ脳で考え、心で感じている。人間とは、人と人の繋がりが切れることは、僕はないと思う。いくら忘れようが、亡くなってしまったとしても、必ず思い出せるし、必ず心の中で生き続けているはずだ。自分なんてまだまだ若いと言われる年齢だが、自分は正直なところ実年齢より老けていると思う。体も病気持ち、顔も徐々に老けてきた。でもこんな僕でも必ずどこかで思ってくれる人はいて、自分も人を思い続ける。その連続がどのタイミングで、どう大きく変化するかは分からない中生きているのが楽しいのではないだろうか。相手がどう思っているか分かるような、そんな薄っぺらい人より、駆け引きをしながら、そして愛しながら会話できることが一番だと思う。
そして今でも、これからも彼女への想いは変わらないと思っている。