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おっぱいで人生を踏み外したバカな男の話を聞かないか?  作者: ……くくく、えっ?
三章:うろくづの森

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モテ期を奪ってやるからなっ!

 思うさま勝鬨(かちどき)をあげると、今から開始する狩りの前の腹拵えとばかりに、ワーグたちはオークの中で一番、大柄なツォンカパに、ゆっくりと近づく。


 仲間をやられた意趣返しの意味もあったのかも知れない。


(……ツォンカパ……が……喰われる)


 分かっていても、どうにも出来なかった。そして、その次は――俺が。


 蠅の毒による熱に浮かされているせいか――この時点での恐怖感は、あまりなかった。単に肉体が諦めモードだった可能性も無いでは無かったが。


(火に囲まれたサソリは、自分を刺して自殺すると考えられていたって、書いてあったのは……シートン動物記だったか? ……ファーブル昆虫記か)などと現実逃避する余裕や、喰われたあとの復讐に


(……見てろ。お前らに喰われたあとで、お腹の中で「クッサイ成分」に変化して、毛穴という毛穴から――


 にるにるにる♪ と、滲み出して、異性のそばに近づくなり……


「……やだ……なに? この臭い……あのワーグさんからよ……ク、臭い!? や、やだ?! 近づいて来た!! あっち行って! キモい!」……みたいな反応をさせて、切ない思いをさせちゃるからな……俺は、お前たちから……かけがえのないモテ期を奪う! 奪って見せる!!)


 熱に浮かされた頭の中で、できるかどうかも甚だ疑問な……いや、まず無理なプランを考える余裕めいたものも――さて有ったのか、無かったのか。

 

 せめて身体を刺し続ける蠅を、なんらかの方法で、どうにか出来さえすれば、俺に限って言えば、身体は即座に再生されるに違い無いのだけど――。


 だからと言って、ツォンカパたちですら太刀打ちできない相手を……俺一人の力で、どうにかできるとは到底、思えない。


 ナアス蠅に刺され続け、もう身体の感覚も無い。周囲の音も聞こえ無くなりつつある。

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