下処理は丁寧に
辺りの気配から察するに、ワーグたちの数は、残り6~7頭といったところまで、減らすことに成功したようだった。
よっぽど腹立たしかったのか、聞き取り辛い恨み節は、さらに続く。
「ゴブリン……ドモ……ト、トリヒキ……シタ……ムシ……マデ……ツカウ……ハメニ……ユ、ユルシガタイ……」
(……あ~。察するにこいつら、襲撃の隠し玉に、ゴブリンから蠅を仕入れてた訳だ。首から提げている匂い袋は、大方……虫を近づけないための代物なのか)
少し離れた場所からオークの呻き声が、聞こえてくる。
あちこちが腫れあがり、身体を動かすことはできなかったが、僅かに首を動かし、目だけでそちらを見る。するとそちらの方では──生き残ったワーグが、火の点いた燃え差しを咥え、オークたちに火を押し当てて、なにかをしているように見えた。
一瞬、憂さ晴らしのために、火でも当てて回っているのか? とも考え、薄ら寒いものを感じたが──どうやら違う様子。
現に火を押し付けられるオークは、次々に変更され、その「作業」が終わったオークに対しては、加えて火が当てられることは無かった。
ワーグの長の恨み節を耳の片隅で聞き流し、その作業を眺め続けていた。そして、しばらくして──ワーグたちが行っていた作業が何なのかを、ようやく理解。
(……あいつら、まさか……止血……しているのか?)
作業を眺め続けて、その結論に辿り着く。
ワーグの長の言う通り、俺たちは全員、こいつらの餌でしか無いらしい。
わざわざ外傷を焼いて止血を施しているのは……恐らく、少しでも長く生かしておいて──餌である俺たちを日持ちさせる、保存のための措置に違いない。




