負けイベント回収中
汚物にたかる蠅の色を思い返して、もといもとい。ましてや名前に「死体」と付く蠅が、衛生的に考えても綺麗な訳無い。
「けど今は、ワーグの方に集中しないと……」
それを単なる、炎の明りに集まって来た、虫程度にしか考えなかった俺は――注意を促してみたが、ツォンカパの表情は、深刻そのもの。
――突然、木々に潜んでいたオークが、地面に落ちる鈍い音が響いた。それと同時に、襲い掛かって来るワーグ達の唸り声と、地面に落ちたオークが格闘する音、落ちた仲間に襲い掛かるワーグに、毒矢を射る音、毒矢を受け悲鳴をあげるワーグの声、戦いの音が、夜の森に再び広がり始める。
落ちたオークは――考えるまでもなかった。
元々、膂力に差がある上に、木から落ちてダメージを受けたオークに、勝ち目など無い。間隔をおいて同様の音が、次々に周囲で起こり始める。
「な、何がどうした!?」
慌てふためく俺。完全に、俺の提案した作戦が裏目に出た形になった。ツォンカパは、捕らえたナアス蠅を、空いた片手の人差し指で弾いて、粉々に消し飛ばすと、静かに槍を手に取り
「……マズいことになったものだ」と、相変わらず、説明の足りない物言いで、俺の不安を掻き立てることを呟く。
周囲に集まる鬱陶しい翅音。
理由は分からなかったが、ナアス蠅が多分、このロクでも無い状況の原因のひとつであることは、容易に想像がつく。
俺は、手が届く場所に積んでおいた松明を、自然と手に取り、火を灯していた。
――首筋に激痛。いや、激痛と言う表現すら生易しい。
あまりの痛みに俺は叫んで、みっともなく地面を転がり、のたうち回っていた。先ほど、毒矢を受けたワーグたちも、きっとこんな痛みを味わっていたに違いなかったが――そのことについて、感傷に浸る余裕など微塵も無かった。




