先に言ってくれ!
その他、負けじ劣らじの出来の悪い宴会芸をいくつかで、精々だからな?。
「こんな頭のオカシイ戦術を、我らに実際にやらせてのけるとは! これほど愉快なことは、生まれて此の方無かった!」
「『頭のオカシイ』そう思ったんなら、先に教えてくれ!」
……どーりで、この提案をした時のオークたちが、怪訝な表情をしていた訳だ。
「善い善い。闘諍は、こうでなくてはな。……しかし、ワーグの長は退屈されて、袖に引っ込んでしまわれたようだ。もてなしを変えるとしよう……。放て!」
夜の森を揺るがすような声で、ツォンカパが叫ぶ。すると今度は、灰で満たした壺に置き火を入れて、携帯していたオークらが火矢を準備し――あちこちから放ち始めた。
村を囲むように植えられた逆茂木や、草葺き屋根の建物が、一斉に燃え上がり始める
(……こ、ここまでやるか? 森の中だぞ?)
「……善い。実に善い」ご満悦の様子のツォンカパ。
燃え上がり始めた家屋に飛び込んだワーグたちは、火に巻かれて小屋を飛び出したところに毒矢を受けるか、燃え落ちる建物の下敷きとなって焼かれるかして、その数を大きく減らし始めた。
いち早く小屋に逃れて、毒矢を躱して見せたワーグの長も、燃える家屋の影から影に、身を隠して逃げまわり――火の点いた逆茂木を飛び越え、森の中に消えて行く。
十数頭だけになった残ったワーグたちも そのあとを追い、森へと消えて行った。
「……お、追い払えた……のか?」




