みんなで戦支度 【Picture】
オークたちの弓が強いのか、それとも鏃に用いたカッター断片の切れ味が良すぎるのか。オークたちからも感嘆の声。
……これに懲りたら、普段からしっかり矢を矧いでくれ。そして備蓄しといてくれ頼むから。
その後、オークたちの手による流れ作業で瞬く間に900本の矢は完成。
弓に矢筒、その他の武具と併せて配備が始まり――村の周囲にはワーグたちの嗅覚を封じる気休めにと、獣の油や、なんだか分からない異臭漂う液体が撒かれ始め、中央には油を満たした鍋に火が灯されて、篝火も用意された。
「ツモイ。こっちに来い。お前に鎧を詰めた。着ろ」
先日、俺を採寸して小屋に消えたオークが、自動車の運転席で足元に敷くマットのような物を持って来た(なんだよ……これ?)
それは厚手の布で作られた腰までの丈のエプロンに、短い巻きスカートを組み合わせたような形状をしていた。
「……お前は動きが鈍くならないように、これが良い。鉄の小札を並べたものを布で挟んである。鎧下を着てから、これを着ろ」
礼を言って、その鎧だと言われたものを受け取る。
だいぶ後になってから、このタイプの鎧を俺たちの世界で「ハルキス型ブリガンダイン」と呼ぶらしいことを知ったが――この時はまだ「防御に不安しか無い鎧」といった印象以外、湧かない代物。
なにせ、この鎧。
素材に布が用いられている上、肩にも背中側にもまったく装甲が無かった。
その露出っぷりたるやネルと出会ったその日に――彼女が身に着ていた青いドレスを彷彿とさせる。
(大丈夫、だろな……コレ。それにしても……)
実際に身に着けてみると、鎧を身に纏うと言うのは初めての経験だったがーーこんな鎧であるにもかかわらず……何故か俺の心には、安心感と余裕のようなものが生まれていた。




