表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おっぱいで人生を踏み外したバカな男の話を聞かないか?  作者: ……くくく、えっ?
三章:うろくづの森

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/1638

戦を見て矢を矧ぐぞ

 割る時に誤って、自分の指先を深々と切ってしまい、血が流れ出す。

 その切れ味を目にしたオーク達は、驚きの声。


 ――切った指先を口に入れて舐めると、広がる鉄の味。


「ほら? (いくさ)を見て矢を()ぐんだから、さっさと動け」


 俺はオークたちを()かし立てた。




 * * *




 初めて足を運び入れたツォンカパの村は、俄然(がぜん)活気に満ち溢れていた。


 皆、それぞれに割り当てられた作業に――手を、身体を、動かして、愉し気な声で「コイツがワーグの(はらわた)(えぐ)る瞬間が待ちきれぬ」だの、「ツモイが持って来た(やじり)をどう留める? 身体の中に残るように矢柄(やがら)に甘く噛ませて()わえるか?」だの「毒ができた」だの……だのだのだの。


 好戦的なのは、分かってはいたが……。ここまで楽しそうに、殺し合いの準備を始める周りのオークたちの様子に、さすがに少し引きつつ、苦笑い。

 

 村は既に女子供を逃がした後で、残ったのはツォンカパ同様、年老いたオークたちを筆頭に、指の数本が無い者、足を(わずら)っている者、病に()せっている者などを合わせて、30名ほどが残っていた。

 

「ツモイ、身体を測らせろ」「腕の長さを測らせろ」と度々、入れ替わり立ち替わり、オークがやって来ては、俺の寸法を縄で測り、粗末な小屋に戻って行く。なんでも、この俺もオークの栄誉ある戦いに、仲間として加えてくれるらしく、もののぐを仕立て直しているのだとか。有難いことで、本当に涙が出る。おうちに帰りたい……。


「……礼を言う」背後から、ツォンカパからの感謝の言葉。


 他のオークたちが作業する中、ツォンカパは椅子に腰を掛け、しんどそうな様子ではあったが、村のオークたちの様子を、優し気な表情で眺めていた。ツォンカパを見た俺は――昔、祖母の家で飼われていた年老いた猫の、最後を迎える直前の様子を思い出す。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ