オークのみんなに、なんだか……イラッ♡
「分かったわ」
ロキシーの尾羽を毟る作業を任せ、俺は、調理用のボールを取りに家に入ると、我が家の新しい住人、雌ヤギのデモピレ母さんの乳搾りに向かうことにした。
「……遺伝情報は、近くなるかも知れないけど。デモピレさんに手を出したりなんかしたら、ぶっ飛ばすからね?」
作業の手も止めずに、そんなことをネルに言われた気もしたが。もはや、それに返す気力は、残っていなかった――。
――夕刻――
いつものように稽古場に向かうと、ツォンカパは、何人かのオークを引き連れて、既にやって来ていた。
俺の姿を目にしたツォンカパは『良い手立ては思い浮かばなかったのだな』と察したようで、口の端をあげる。
気にする必要は無いと、云わんばかりの表情を浮かべて、連れて来たオークたちの顔を見回すと、他のオークたちの様子にも、悲壮感などはまるで無く、残された日数の間に「なにを食うか」だのと、楽し気に口にしていた。
「……自分の命に、未練のひとつも無いってか」
その場のオークたちが、顔を見合わせ一斉にこちらを向く。
日本で好き勝手絶頂にイキがる所謂、いかつい系のお兄さん方なんて、お話にもならない、恐ろし過ぎるオークたちを相手に――癇を逆撫でしかねない言葉が、俺の口から飛び出そうとは……。
「ツォンカパ。矢のアテは出来た。集められるだけのオークを今すぐに集めろ。矢柄を急いで1000束削り出せ。弦を縒れ。獣の歯と骨をノコで引き割って、矢筈を作れ。矢羽を付けるニカワを煮出せ。あと2日と半日だ。急げ」
そして俺は、ネルがロキシーから毟りとった、尾羽を包んだ布と――まだ割っていない1000枚の鏃の塊をオーク達に見せ、その場で刃を 拾った小石で挟んで、一片を割ってみせた。




