時間が無ぇんだってばよぉ!
「でも……だからってね……だからってね……鳥類のロキシーさんを無理矢理にってのは、どーゆう了見なの! せめて相手は! 遺伝情報が近い哺乳類か、イデアを物質化させられる、アタシたちみたいな龍にしときなさい! こんなの……こんなの……痛まし過ぎて……痛まし過ぎて……みじめ過ぎるじゃない……うっ……あ、あれ? アンタが……ロキシーさんを抱えて、腰振ってるところを想像したら……涙が……」
「たぁのむから! Ⅹデーまで、時間ねぇんだから!! あー!! もぉ!! いつもみたいに一丁! ズバッと俺の頭ん中、覗いて見てくれよ!! そうすりゃ、分かるから!!」
「……アンタの……アンタの、頭の中なんて、覗きたくもないわよぉ……バカぁ……」
そんなこんなで――ただでさえ、時間の無いこの状況で、号泣を始めたネルを宥めるため、明け方までの貴重な時間を、費やしてしまう事になった。
* * *
「――いつも通り、種をしっかり存続させてあげる事で報いるから、我慢してね……。アタシのつがいが、貴女の尾羽が要るらしいのよ……」
感情のままに泣き喚き続けたネルは、明け方近くに、やっと誤解を解いてくれた。
その誤解が解けるまでに、夜を徹して費やした――俺の労力たるや。
そして今、ネルはロキシーに優しく言って聞かせたあとで――14枚ある、尾羽を手際良く抜き始めた。
想像した通りロキシーの尾羽は、抜かれる側から生え揃い、矢羽に必要な、充分な数の尾羽を、あっと言う間に、手に入れることが出来そう。
「何枚くらい必要なの?」ネルがロキシーの尾羽を毟りながら訊ねてくる。
「1本の矢に、3枚の矢羽が要るとして……。この羽を真ん中から割って使うことを考えれば……ロキシーの尾羽の数は……14枚か? 14×108で、鏃の数から必要になる矢羽には足りるの……かな? いや、作業で失敗する分も考えて、少し多めに尾羽を貰ってくれ」
寝不足で回らない頭で、必要な数を割り出す。




