君だけは……と、信じていたのに
「チーズでアタシたち姉妹6頭、フルコンプして『姉妹丼じゃ~い♬ 六龍盛りじゃあ~い♡ いやっふ~~~っ♪』……みたいな? 18禁エロゲ―みたいな、トンチキなこと考えてるの? 世間様が認めても、アタシが許しゃしないわよ。繁殖相手に、するつもりもないなら、粉かけてんじゃないわよ、って……何度、言えば……分かんのよ……」
ギリギリと両手の平で顔を挟まれ、お説教を受ける俺。その手を今すぐにでも振り払い、オーサに釈明をしたかったが、ネルの迫力が、今それを許す空気のそれでは無い。
「じゅ……18禁エロゲ―……」
視界の及ばない――背後から聞こえるオーサから洩れた言葉に、胃を鷲掴みにされるかのような感覚。
「ちっ!? 違うんだオーサ?! 別にそんな不埒な考えで、お前にチーズを手渡していた訳じゃ無いんだ! ただ、始めて見たら、面白くて仕方無かったチーズ造りで! 美味しくできたモノを、食べて貰って……感想を聞かせて貰いたかっただけなんだ!」
ネルに顔を押さえられたまま、背後のオーサに必死の釈明。
無様に声を張り上げてまで、必死にそれを行う必要は、彼女たち相手に限って言えば、必要なことでは、無い訳ではあるが。その時の俺は、ネルの指摘を受けて(幾分、その表現に露悪なものが混ざっていた感は否めないが)取り乱すだけ、取り乱してしまっていた。
「18禁……エロゲー……に、義兄様……そ、そ、それっ……」
俺に怒りの視線を注ぎ続けたネルが――俺から目を離し、オーサに向く。緩んだ両手から抜け出し、頬をさすりながら、俺もオーサに恐る恐る顔を向ける。
「に、義兄様! わ、私っ!? エロゲ―と言うものに……触れたことが無いっ?!」
上気させた頬。切れ切れの息――まるで新しい世界を見出した、探索者の様な表情を浮かべる彼女。
俺たち……ひとりと3頭は「ああ……そう……なんだ……」と、喜色満面の彼女の笑顔を前にして、そう口にすることしか、できなかった。




