乳天
のほほんとした様子で作品の感想を口にするネルに――
「それは良いから……ルチェッタ見ててやってくれよ……看護婦さん」
「やだ! 女医さんがイイ!」
取り留めのない、いつものやり取りを繰り広げる俺たちに、オーサがぽつり
「姉様……気付かない?」
「気付くわよ……これは……アレよね? 稀代の……天才彫刻家……ごにょごにょごにょ……うんたらが、生涯をかけて……そのナニした……あれでしょ? 知ってる知ってる」
姉の尊厳を必死に取り繕おうと、聞く者の知能指数を低下させる呪文の如き、なにかを口籠る可哀想な子。
そんな姉の様子に構いもせずにオーサが呟く。
「これは……ナラクノホシテントウムシを、モチーフにしたものだわ……」
* * *
聞きたいことは色々あったが、ひとまずルチェッタを屋敷へと運び、寝かしつけ――手の空いていた夢魔の娘に付き添いを頼むと、オーサの住まいへと急いで戻る。
その頃には、ネルは興味を無くしたのか、ホールの寝椅子に横たわり
トレードマークのロケットおっぱいを上に向け、いささか重力に負けて、溶けて流れる2つの巨大なプリンを連想させるソレを、相も変わらずにそびえ立たせて――おやつ後に貪る惰眠に合わせて、上下させていた。
まぁね。酔いどれメス狸のお前さんが、この賢い妹さんたちを取りまとめて何かしてくれるとか、これ……ぽっちも! 期待なんかしていなかったさ。でもね? おねーちゃんなんだから、そこはさあ?。
考えるだけ虚しくなることを、溜息ひとつ頭から振り払うと、義妹たちに近づく。
彼女たち3人……いやこの場合は、3頭と言わないといけないのか? 彼女たちは、件のオブジェの前に集まり、なにかを話し合っていた。
「ただいまぁ……それで? そのナラクノなんたらって、なんなんだ?」




