人狩り
屋敷の外には、呼んでも居なかったのに、貴族の娘たちも義憤に耐えかねるといった面持ちで、甲冑姿に剣と盾を手に顔を並べていた。
「あのエルフさんを商品扱いした奴がいるのよね? あたしたちもお手伝いするわ」
デズデモーナの声に頷き、賛同を示す貴族のお嬢様たち。
(その奴隷商いを手広くやっているのが、君の御父上なんだけれどね……)
とは思っても、間違っては口には出せない。
わくわくした表情で今か今かと俺の声を待つオークの娘たち。今回は御期待にお答えしよう。
「人狩りダアァァーーーっ!!」
俺が上げた声にオークの娘たちは、嬉しそうな声。――その他の面々は、何事があったのかと顔を見合わせていた。
* * *
「森の中で胡散臭い奴を見つければ良いんだな? 生け捕りってのが眠てェが……『人狩り』って響きが良いゼ」
ウルリーカの嬉しそうな顔に頷き「オークの血が騒ぐ」と、同意を示す、クィンヒルデとスキュデリ。
「安心しろ……生け捕りの後にはそいつ等、タダでは置かんから」
いつもとは異なる俺の雰囲気に目を輝かす3人。
捕らえた不審者を拘束する結束バンドの扱いを教えた上で、その束を手渡す。
「私たちは、とむとむ・てあー・とむとむ・てあー・ぽちょぽちょ・さらさら月光号で、みんなを運んでまわった後で、空から不届きな連中を探してまわれば良いのね?」
ゲルダは重要な役割を任されたことを察して見せたらしく、腕を組んで反り返る。
彼女の広いおでこに、現世のバイクショップで買って来ておいた、ゴーグルを被せるように装着。
ベルトを合わせて居なかったせいで、それはストンと首に落ちた。
「わしは何をすれば良いのじゃ?」
自分の役処が把握できないといった顔で、唇に指を当てるヴィルマ。
「お前はロアに……この領内に入り込んで、悪さをしようとするアホ共の居場所を聞いて、教えてくれ。その場所にゲルダたちの大釜で、人を運ぶから」
俺の言葉を聞くなりヴィルマは、目を細めて不敵に笑う。




