どうして……次から次に
悶々と考え込み続けること、しばらく――
「そろそろかしらねぇ~♬」
「そうですね……そろそろな気も致しますね」
ネルと、アルパゴンが珍しく調子を合わせる。
出口のない迷路に放り込まれた様に、ぐるぐる考えを巡らせ、悩み続けていると――なんだか、段々と腹立たしさが、こみ上げて来た。
「ほら、来た」
ネルの――全て分かっているのよと、言わんばかりの声。
「アルパゴン……ヴィルマを呼べ、魔女のばーさんに……預かった娘っ子共もだ。クィンヒルデたちに、もののぐを支度させろ……夢魔の娘たちにも声をかけろ……もう、我慢ならん」
「ハイハイ。分かっておりますよ♪ 御主人様」
一礼の後に、部屋を飛び出して行く悪魔。
「アンタって……いつも延々と悩んだあとで、結局は成り行き任せなのよねェ。でも嫌いじゃないわ。その大雑把さ♡」
ネルの茶化す様な声に、無言で椅子から立ち上がる。
「……行ってきます」
* * *
レザーを扱う天才職人が手掛けた一品、ミスリルのタグが取り付けられた、磨き抜かれたボルドー・レッドのホルスターに腕を通し、両脇に吊る。
同じ職人が手掛けたスピード・ローダーのマグポーチを2つ、腰のベルトに通して、ホルスターを支えるサスペンダーの片側にも2つずつ。
腰の左には、ツォンカパに貰った剣を提げ、両腕にはアームスライド。今は、もう無いらしいカスタムガン・メーカーのデザインを元にしたらしい、.357マグナム・バージョンのデリンジャーを仕込む。
背中には切っ先を上に向け、握りを下に吊った大型のボウイ・ナイフ。
「御用意しておいたものですが、こちらを御被り下さい」
アルパゴンが、海賊が被るような三角帽子、トリコーンを差し出す。
この今の俺の……バカみたいな重装備には皮肉が利いていてイイ。手に取って、部屋を踏み出し、屋敷の外へ。




