逃亡奴隷
小腹が空いた俺が、厨房を漁っていると、窓の外からゴブリンたちの俺を呼ぶ声。
やはり魔素の副作用でも出たのだろうかと、 何事かと不安になり、窓を開いてみれば、急いでついて来て欲しいと訴えるゴブリンたち。
火を確認すると、そのまま窓から外に飛び出す。
ゴブリンに案内されるまま、駆け出してみれば、辺りの景色は――屋敷の緑溢れる風景から、季節相応の落ち葉が降り積もる森の風景へと変わった。
どうやらネルの領域を出たらしい。積もった枯葉に足を滑らせ、ゴブリンに先導されるまま、森の中をランニング。
15分ほど走っただろうか。どうやら目的地にへ着いた様子。
乱れる息で、ゴブリンたちに何事かと訊ねようと息をひとつ飲む。
呼吸を整え、口を開こうとしたところで、俺はゴブリンたちが、ここへと案内した理由を理解した。
そこには傷ついた――エルフの女性が、倒れていた。
* * *
身体の上に降り積もった落ち葉をそのまま、呼吸を確かめる。
弱々しいが息はある。外傷も見る限りで――縛られていた痕なのか手首、足首に擦過傷が見られる以外、確認できない。
衣服は酷いものだった。例えを挙げるなら、数十キロ単位で個人輸入した、コーヒー豆を詰める麻の袋に、首と腕を通す穴を開けただけといった、粗末すぎる代物。
身体が大きくなって、チンチクリンになったウチのゴブリンたちの「上下、シマムラで千円ちょっと」と言った、装いの方がよほど上等に思える。
女性を抱え上げると、ゴブリンたちに言い放つ。
「良く報せた! お利口さんのお前たちには後で、御褒美をやるぞ!」
嬉し気な声を上げるゴブリンたちを置いて、屋敷への道を急ぐ。




