陰キャのクセに、集団の陶酔に俺は滅法弱かった
『女神アレクサンドラから遣わされた使徒か?!』とまで騒ぎ立てた騎士が、あっけなく無力化された訳だから、致し方も無いと言うものだろう。
その騎士の振る舞いは――アレ……だった訳ではあるけれど。
引き揚げた騎士を「ころ」に載せると、皆は悪魔が開いた『門』へと引っ張り始める。俺の我慢もそこまで。壁の上の衛兵に向けて声を張り上げる。
「おっ騒がせ致しましたぁーっ! これにて我々は撤収致しまーす! 街の方々によろしくお伝え下さーい! それでは失礼しゃーっす!!」
言うべきことを急いで言い終えると、バイクに飛び乗って、俺は皆の方へと急いでいた。
「俺も混ぜてえぇぇーっ?!」
* * *
頌の連中に礼を言って帰して、ペルシュロンたちを馬場と厩舎へと戻した後で。
屋敷の片隅に牽引ロープを解かれて、デカデカと鎮座する――スコラスチカの糸で白い繭のようになった騎士の前に、皆が集まっていた。
「微生物さんたち? 繭食べて良いわよ」
ネルのお許しが出るや、目にも見えない微生物たちが集まり、スコラスチカの糸で造られた繭を――湿気を吸って、消える綿飴のように分解し始める。
「お……おい? ここで、繭を溶かしちまったら……」
こいつの気狂いじみた暴れ様を思い出して冷たい汗が流れる。
「……ほんと、小心者よねアンタって」溜息をひとつ「こいつは、この領域の中に入り込んだ時点で終わりなのよ」
そうこう言っている内に、拘束するための必要な強度を保てなくなった繭の中から、騎士の腕が突き出された。




