騎士捕縛
降ろされたスコラスチカが、そんな騎士に慣れた手際で糸をかけ始める。
この表現が適当かどうかは分からないが……。
その作業風景はまるで――出来上がったお好み焼きの上から、口の細い容器から辛子マヨネーズでも掛けている光景にもちょっと、似ていた……かも知れない。いや、下町の油の煙が感じられるこの表現。
そこはクリスマスのスノー・スプレーの様だとでも改めるとしようか。
糸に掛かった騎士の身じろぎで、糸を断つのも間に合わず、幾度か彼女が引きずり込まれそうになる危うい場面もあったが――大した問題には、ならなかった。
ここ最近、気温が下がったことで、降りるようになった夜露で、ぬかるんだ地面。自身の重量から足を取られ、這い上がれない騎士と違い――スコラスチカの方は、引っ張られてクレーターに脚を滑らせたところで、直ぐに糸を切って、しおり糸を伝って、這い上がるのを繰り返すだけ。
おまけに、こちらにはゲルダも上空で控えている。
そうこうしている内に――騎士の捕縛、いや梱包と言うべきか? それは完了してしまった。
* * *
「おら! 引けえぇい!」ハリバドラが、野太い声を上げる。
あざなわれて、高強度の綱に変えられたスコラスチカの糸と、何重にもかけられたトラックの牽引ロープを声を合わせて引く、頌の部族の皆と重馬ペルシュロン。
(……やべぇ、楽しそう過ぎる)
クレーターの斜面を徐々に引き上げられる騎士に、そわそわするものを抑えきれない。
街の外壁の上から、唖然とした表情で俺らを眺める衛兵の皆さん方。




