地面って弾むんです
トキノが操作する、頭上を飛ぶ複数のドローンが後を続く。
騎士像との距離はおよそ100m強。得体の知れない相手と、装甲を抜くために選択した、2発の弾頭が縦列に並ぶタンデム弾頭を用いたが――ミラーで見る限り、もうもうと黒炎の中から現れた騎士にダメージは見られない。
頭部に見えるバイザー状の眼部に赤い光が点る。
「逃げて! 逃げて! 逃げて!」トキノが急かす。
「全高で人間のおよそ4倍近くあるのに、人間と変わらない速度で動くんだよ! 末端部分の速度は人間の4倍以上、早いんだから!」
バイクを走らせ、指輪から『ボトル』を呼び出す。
騎士は、こちらを確かに認識して、地響きを立てて追い縋って来た。
「なんちゅう地響きだコレ?! 馬で来なかったのは正解だったわ!」
* * *
カード一括で購入した、中古の250ccのオフロードで、一目散に逃げていると、トキノがデシレアの通話を繋ぐ。
「どう?! おにーちゃん! 殺った?」
「殺ったとかって言うのはヤメなさい! タンデム弾、やっぱ効かなかったわ!」
騎士の駆ける一歩毎に、地面が地震のように揺れる。軽量のオフロード・バイクであったからこそ、バイクに乗って数時間の俺でも、まだ扱えてはいたが――最高速度なんて、とても出せそうに無い。
明らかに、こちらのメーターは会敵時の騎士の速度を上回っているのに、距離は開かない。
「……経年劣化もあるだろうから、当たり所が良ければとも思ったけど……やっぱりダメだったかぁ」
デシレアが、小さな溜息。
「兵器としての有用性を放り投げて……人が龍を倒すって言う、想いだけで選択された形状の、2足歩行兵器だもんね。テクノロジーの差は、どうにもなんないよね……」
「も、元々、これで……どうにか片付けようとか、か、考えて無かったから!」
不整地と言うことに加えて、騎士の走る振動で、信じられないことに――トランポリンの様に地面が弾む。
「単なるヘイト稼ぎだから!」




