会敵
社会的に死にかけていた俺が――シルシラの連れて来た夢魔の娘たちのお陰で、なんとか社会復帰できるかも知れない、糸口の様なものが掴めた、この機会。
トーヴェが実体を顕わにして、その伝え聞く超戦闘能力を発揮して「アレ」を打ち砕けば――話は早いのかも知れないが、そうなれば、それを目にした人々の口を伝って、広まる俺に対する悪評は、修正不可能なものになってしまうことも……あり得るかも知れない。
いや、きっとそうなる。なにせ虫歯の痛みで、のた打ち回ったと言うだけで、大陸ひとつを海の底に沈める龍の姉妹の中にあって、事実上の序列2位と言う、トーヴェが出て行くと言うのだ。どんな被害が起るのかは予想もできない。
それこそ先にデシレアが挙げた、榴散弾の効力半径とやらの方が、よほどささやかで、そよ風の様に思えるものになりかねない……。
部屋の一同が、俺に視線を集める。
「……なんとか、してみ……ますよぉう」
その視線に応える俺の声は――我ながら、どこまでも しょぼくれた響きで……。
(面倒くさぁい……)
「とりあえず……メルトゥイユに、プレァリアのヴァシレフ氏との繋ぎを頼もうか……」
* * *
「RPGぃーーーっ!!」
良くある戦争映画の「間違った」掛け声のもと、元気良くトリガーを引く。
映画と異なる目にも止まらぬ速度で発射された弾頭が、一直線に騎士を模した、ナニか目掛けて飛翔する。
着弾。そして、続けての二重に、こもって聞こえる爆発音。
アルパゴンにオマケしてくれた死の商人のおっちゃん……有難う。今度、気が向いたら、世のためにはならない、あなたたちに義妹をけしかけて……追い込みをかけます。
感謝だか嫌悪だか分からないことを、ウダウダ考えていると、耳に嵌めたハンズ・フリーからトキノの声。
「ぱぱぁ! 効いて無い! 逃げて!」
矢継ぎ早のセコンドの声。跨ったバイクのアクセルを右手で吹かす。




