無い脳みそ振り絞って、考えごとしてんだから
――しどろもどろの釈明。
(……あの子。……そんなに、おっかない子だったのか)
今、初めて聞かされた義妹オーサの恐ろしさ。そんな子の胸を……俺の目の前で、ねちねちこねくりまわして見せたと言うのか、コイツは。
……嫌がるあの子が、ブチギレでもしたら、どーするつもりだったんだと。
――溜息。
それを非難か失望と取ったのか。俺の頭の中を読み取れるハズの癖に「ごめんなさい」とネルは、心底申し訳無さそうな表情。
「いや、いいよ」ネルの髪をひとつ撫でて。やはり、ことの次第は――そう簡単にはいかないらしいことを再確認。
「じゃあネル? 俺が、住んでたアチラ側の世界に行けるのは……次は、いつだ?」
俺の貯金の残りで一体、どれくらいの矢が、調達できるかは分からないが、一縷の望みとして、現世の工業生産力にすがりつこうと考えた。
正直「あちら側の時間」が進むことになるので、元の姿を取り戻す目途が立つまでは、行き来を最小限に抑えたかったが仕方が無い。
「……星の位置が整うのは、次は10日後……かしら……ね」
けれども、そんな最後の望みも儚く消えた。
* * *
「ど~すっべぇ……ど~すっべぇ……」
かつて、こんなに俺が悩みに悩み抜いたことは、人生において無かったと断言できる。なにせ、今回のこの件には、多数の人の命――いや、オークの命が掛かっている。
頭を抱えて、家の前でうずくまって悶々と考え込む。
「今から矢を作る。……作ったことが無いから分からんが、必要な物は、鏃と矢羽、矢柄……あとは、名前が分からんけど、弦を番える矢のケツの部分。……おおぉ、分かる分かるぞ? それらをあと4日で、大量生産することの無理ゲーさが、手に取るように分かる」




