洗脳商売
「……てな感じでさ? あの夢魔の子たちにお願いして、親父さんの心変わりのための鼻薬の様な手立てを願えないかなと……考えている訳だけど……どう……かな?」
暫くして、部屋にやって来たデズデモーナに、考えを明かすと――煮詰まり切ってはいないプランであるにもかかわらず、彼女は理解を示してくれた。
「えぇ……あたしに異存は無いわ。お父様が、旦那様と御姉様に御迷惑をお掛けして正直な所……心苦しいどころの話じゃ無かったし。旦那様のお考えの通りにして? ただ……できることなら――そんなお父様でも、あたしのお父様には変わり無いから……あまり、お身体に負担は与えない方向で、お願いできると……その……」
もとより、その腹積もり。その点については、充分な配慮を行うつもりであることを彼女に伝える。彼女はその言葉を聞いた後で、なにやら少し難しい表情を窺わせた。
(……?)
やはり、不安なのだろうかと、再考するつもりもあることを彼女に伝えると、彼女は困った様な表情を浮かべ、かぶりを振る。
「娘としては……実のお父様の寝所に、若い夢魔が入り込むと言うことに……少し複雑なものがあるだけ」と、穏やかでは無い胸の内を苦笑いを浮かべ明かしてくれた。
(ああ、まあね? 父親の部屋に、ピンクのお姉さんを派遣するのを、実の娘が黙認するようなものだしね)
* * *
――その夜――
屋敷の地下階の『門』の在る一角に、俺たちは集まっていた。アルパゴンが門の操作を行う間、夢魔の娘たちに魔素の小瓶と、アレクサンドラ金貨数枚が入った小袋を手渡す。
手にするや、ギョッとした表情を見せる2人と、1人。
「……だ、旦那様? こ、これは?」
「必要と判断したら、使ってくれていいから」
彼女たちの反応からすれば、この魔素と言うものは、それほどに重要な代物なのか――。




