大惨事
「……えぇ~っと」
部屋の中に居た堪れない空気が充満する。積み上がった本の塔に囲まれるベッドの上で、伸び放題の長い髪を振り乱し、枕に顔を埋めて泣きじゃくるシルシラ。
……いや、既にそれは号泣に変化を遂げていた。
大泣きするシルシラに、無言で視線を向けるギアネリ。
今や、屋敷中に轟かんばかりに笑うアルパゴン。
申し訳無さそうな視線をシルシラに向ける夢魔の娘たち。
この状況の元となった――原因。人とのコミュニケーションを苦手とする彼女が、それを必死に隠し通そうとした内容。
それは思春期の少女が、秘密とするに相応しい、甘酸っぱいやら、艶っぽいやら、少し倒錯しているやらの――つまびらかにされるのが可哀想なもの。
「旦はん……」ギアネリが、俺に声をかける「……お、おう」
「……ウチな。実は今日、ヴィヴィに寝る前の絵本読んでやってお腹トントン♪ ……したって、寝かしつけて、やらなあかんねん。あとのことは、あんじょう……よろしゅう頼むな?」
「はぁっ?!」俺が、素っ頓狂な声を上げた後で「どう考えてもアイツが、そんなたまな訳はねぇ!」と、突っ込みを入れようと、振り向くより早く。ギアネリは、扉を勢い良く開いて逃げ出していた。
「あ、アルパゴ……」そして悪魔も、既に居ない……。
ベッドに近寄り、慰める様にシルシラを囲む3人の夢魔。
「今夜は……私たちが責任をもって、シルシラの御面倒を見させて頂きます。御主人は……どうか、お引き取り下さいませ」
「はい……」
俺は彼女たちの善意に――黙って、従うしか無かった。
(こんな夜は……ネルの……おっぱいに顔を埋めて……寝よう……)




