開いてはならぬ
いつもの眠た気な――力のない眼に、厳しいものを少し……ほんの少しだけ宿す、ギアネリ。
「……せやな。アルパゴン。あんたが今、読み取ってみせたこと、旦はんの名において、説明しいや……えぇな? 旦はん」
俺の名前を便利に使おうとするなよぉう……。
(……女って、こう言う……我が物顔で、器用に手に届く範囲の物を使って、物事片付けるところあるよなぁ……別に、この場合……気にもしないけどさ)
「私は……御主人様の御意さえ御座いましたならば、異存はありませんとも……」
胸に手を当て恭しく、頭を垂れる悪魔。こいつが、こう言う態度の時って、ロクでも無い時ばかりなんだけども……。
既にシルシラの両の目には涙が浮かび、嗚咽が始まろうとしていた。
なおも厳しい表情で俺を睨むギアネリ。
事態を見守り、沈黙を続けるサキュバスの娘3人。
(シルシラには悪いけど……)
血は繋がらないにしても――共に姉妹として育ったギアネリの。シルシラを心配する気持ちは、理解できなくは無い。
それに本人は自身の魔術の才が無いことを公言して憚らないが、まがりなりにも魔術師を名乗っている訳だ。
もし、この件が何らかの問題に繋がっていて、そのことをギアネリが懸念しているのだとしたならば……選択の余地は無いように思える。
しばらく、考え込んだ末。俺は、ギアネリの言葉に従い、アルパゴンに対して、シルシラが必死になってひた隠し、夢魔の娘3人が沈黙する事柄についての、知り得た事柄について開示させた。




