問い詰めるギアネリ
「精々、辺境の目障りな勢力を討伐に向かうための……軍を動かす口実程度なのだろうと考えていたんです……」
アレサナと名乗った銀の髪の彼女が、碧い目に無念を浮かべて俯く。
結果は、戦とは言えない一方的な、血ひとつ流れない、戦闘とは呼ぶにも足りない――なにか。
一緒に「こちらに」やって来た、仲間の夢魔たちも居たらしいが、これでは極限状態に陥った人間が、ザブザブ垂れ流す精気にはありつけないと、逃げ去る様に元の世界に帰って行ってしまったのだとか。
そして彼女たち3人は、こちらの世界で存分に精気にありつけると、喜び勇んでやって来たものの……目論見は外れ――帰るには、彼女たちの力の源の精気も足りず。適当な人間から精気を奪おうにも、女神アレクサンドラの信仰が、強いこの地では、迂闊な収奪は、教会の聖職者たちの目に留まることから それも行えず。
魔素も希薄な こちらの世界で存在を失う間際だったのだと声を詰まらせつつ、打ち明けてくれた。
「……分からへんな」
一緒に話を聞いていたギアネリが疑問を呈する「それで、どないして、うちのシルシラと、あんたら夢魔が顔見知りになったんや? 下級とは言っても あんたさん方、まがりなりにも悪魔やろ? シルシラが、興味本位やら、実技の練習に召喚したとして聞き入れるか? 聞き入れへんやろ? どないして、この子と知りおうてん」
(流石は……魔術師たちの、最年長のお姉ちゃんと言ったところか)
* * *
本気でシルシラのことを心配しているのだろう。ギアネリの詰問。
顔を見合わせて、どう答えた方が良いものかと、思案顔の夢魔の娘たち。
「クククツ……これは……」
彼女たち3人を呼びに行って、今まで片隅で沈黙を守っていたアルパゴンが何事かを察したのか嘲りを洩らす。
慌てふためいた様子で、必死に首を横に振るシルシラ。




