華麗なる進退表明
「なんか……もう、疲れた……。お前んち……ザイツェ・アルカンに、俺……住んじまおうかな……」
「おおぅ」悪魔が驚きの声。
「……どうした?」その反応が、イマイチ理解できなかった。
「『どうした?』じゃありませんよ。ご主人様。悪魔の実家に転がり込んで、ニートになろうかな? って。そりゃ誰だって、びっくりしますよ」
その言葉に なるほど……と納得して、ソファーを立つと、俺は部屋を後にした。
「……う~ん。『行き先』すらも見えない。重傷ですねぇ……コレは。『駄目だこいつ…早くなんとかしないと……』だ、ですね。ククッ」
* * *
なんだか全てが煩わしい。首を巡らすことすら面倒臭い。そんな俺は、トーヴェから与えられた知覚に頼って、日々の大半を生活する様になっていた。
不精もここまでくれば、中々に大したものと言った所に違いない。
「はぁ……どうしようピエレット……」
超感覚が捉えた――槍試合の後、屋敷に転がり込んで来た貴族の娘っ子たちの一人、子爵家令嬢、リュシルの声。
相手は、彼女と同じく子爵家の出自と言う、濁りきった眼差しの少女「姫様が……気に病まれる事では……無いかと、思われます」
(…………)
「でも……私が一言、言えば……いくらなんでも辺境伯が、ゲロ気持ち悪い、幼女性愛のドが付く、大変な大変態だからって……ここまで、悪し様に、人々の口の端に上ることは無いんじゃ……無いかしら?」
「それは……残念ですが、無理でしょう」
「どうして? 辺境伯が……変態過ぎるから? 女の子のおしっこが、好きだから?」
「……これら、辺境伯の噂を振り撒かれたのが、デズデモーナ様のお父上。リリェフォッシュ家、現当主様であられるからです。実利的な権勢欲と、卑俗の老醜。あの御仁を相手に今の姫様が、なにかをなされたからと言って、きっとそれは……及びません」
この『知覚』では残念な事に、知り得る「物」の形は朧気で、色なども知ることもできはしないものの……。




