あんまりだ
「それに、あんたさん方、お姫さんたちの家が、この旦はんに御迷惑って、何を言うとるんや……ウチの妹なんて、旦はんの目の前で おしっこ垂れる、粗相を堂々と見せつけとんのやで。いい加減、下らん事を言いなさんなや」
アッサリと秘密を暴露されて「……ね、ねぇちゃん」と、言葉を無くす妹。
「なんじゃ? ヴィヴィはツガータの前で、おしっこ漏らしたのか? 気にすることは無いのじゃ♪ ツガータは幅広い性癖と、度量を持った男なのじゃ♬ きっと、その時もヴィヴィが垂れたおしっこに、ハアハアハアハアしておったに違いないのじゃ。ともすると、その垂れ流された おしっこは袋に詰めて、今も大事に、大事に取っておってじゃ? 夜な夜なネルに隠れて、す~は~す~は~……毎晩の様にキメとるかも知れんのじゃ♡ ナイス・アプローチじゃぞ♪ ヴィヴィ♬ きっとツガータは、ガン決まりじゃ。……雫も残さずヴィヴィから直に嘗め取りたかったと思うのじゃ」
最早……どんな深刻な話も……するも虚しい、この場の空気。別に、深刻なお話なんてお呼びでも無い訳だから――有難いと言えば、有難いことなのかも知れなかったが。
俺は席を、そっと立つと。貴族家の娘っ子たちの視線を背に受けて、泣き叫んで部屋へと逃げ帰った。
* * *
シルウェストリスに、冬が近づいていた。
曇る部屋の窓を愉し気な様子で、拭き上げる悪魔。
俺は、悪魔の様子をソファーに腰掛け、呆けて眺めていた。
「御主人様? たまには、屋敷の外にでも行かれてみたらどうですか? 頌の村でも、領内のどこかの街にでも」
悪魔の言葉とは思えない、優し気な言葉。思い悩む、俺の胸中を把握し切った上での――人の不幸や、悩みや苦しみを喜ぶ、この悪魔で「無ければ」成立する心遣い。




