THE バッド・ディール
「――なんかね?『断熱効率100%の素材と、熱伝導効率100%の素材』を一番上のおねーちゃんに以前、貰ったって言ってたかなぁ……うん、早い話が、熱力学が全否定する永久機関だよね。船のメンテに関しては、おねーちゃんが『ふぅ~~~』ってして、お終いみたいだし。人件費は私たちが、あのお船の全部を制御してて、乗組員とか居ないから、それもゼロ」
(なにそれ……意味が、分からな過ぎて本気で怖い……艦載機? ってナニ?)
燃費を気にしなくても良い、完全自動化が果たされた巨大艦隊。その動力が一体、何であるのかを考えると、別の恐ろしさにも見舞われたが――今は、それよりも……。
「H……How much……Is?」
緊張に、止まる気配の無い身体の震え。有栖川さんに訊ねると「8億4千万円ほど戴ければとの由に御座います。下七桁以下は、サーヴィスさせて戴くとのことでした」
先に、今回の実入りを教えて貰っていなかったなら、卒倒していたに違いない金額。
なにはともあれ、いつも義妹に世話に成りっ放しで、心苦しかった俺は「どうしても」を口にして、その支払いを受け取って戴くことにした。
* * *
――何度目かの、お小遣い予算編成会議の席にて――
「ガブガブくんとアタリメ! あと冷凍カット・マンゴー!」
夕食後の食堂で話を切り出すや、アホの子全開で、ネルは元気良く挙手。
「アルパゴン……酒は100本単位で、イカとマンゴーは、箱で10ずつ手配しろ」
「畏まりましてございます」
俺が、要求を素直に呑んだことが、意外だったのか――ネルは呆けた「えっ?」と言う表情。騒がしいオマエを黙らせるためだよ。分かれよ。察しろ。
「他、なにか要るものが、ある奴は居る?」
テーブルを見回すと、スモック姿のイープの小さな手が、ゆっくりと上がる。
もし宜しければ お読み下さった御感想等を
戴けましたら、大変有難く存じます。
その他にもブックマークや、このあとがきの
下の方にあります☆でのポイントに代えて、
御評価戴いても それを元に参考にさせて
貰いますので、何卒宜しく
お願い申し上げます。
m(__)m




