義妹たちは皆、容赦が無い
「なんでも、その吐き出させた軍装品をだな? 王国側に、まとめて買い付けさせるつもりなんだってよ……」
数万にも及ぶ大軍勢が、丸裸にされて帰って来たのだ。王国側としては、高価すぎる仕事道具を失って、暇を持て余すことになった、無職の群れを抱え込まされたに等しい。
国軍の弱体化が知れ渡れば、きっと隣国なり、蛮族なりの侵攻にも脅かされることになるだろう。そして、この世界では――これら巻き上げられた武具を、一朝一夕に大量生産を行うことなど義妹をおいて出来はしない。
買い付けようにも、きっと……。がめつい商人たちが、それらの武具の値を吊り上げるに決まってる。
「くくくっ……」ここに来て、ようやくハリバドラが、上機嫌な声を洩らし、手のボトルの中身を空けた。
* * *
「……297億円?」
絞り出す様に口にした金額は、あまりに未知過ぎる金額。
「概算……となりますが」
先日の巻き上げた軍装品の一切合切を、デシレアの伝手を通じて、王国側に売却する手続きを済ませ、報せにやって来てくれた有栖川さんの顔は、いつも通り涼し気――場違いにすら思えた。
「ぜ、税金は?」あまりに頭の悪い物問い。しかし、彼は。そんな俺の言葉に、優し気に微笑んで「御座いません」短く簡潔に回答。
「えっと……」
必死に頭を回そうとするも、血の巡りの悪い頭は、驚きの金額を耳にしてから、こちら……上手く回ってくれない。
「ひ、必要経費……どれぐらいになります?」
トキノが戯れに作ったアプリ「キャノンボール・でりばりー」を使って、あの日 あの地に降り注がせた砲弾の価格などが、ドえらい金額になるのではと思い……目の前の――人がイイんだか、悪いんだか良く分からない、掴み処の無さ過ぎる美貌の持ち主に伺う。




