蘇る冒涜者、白竜ネルのつがい
「え~っ、初めまして~、私ぃ~……この一帯を所領と致します、白龍ネルのつがい、オチュア・マブラガニス・ガンツフェルトと申します~。身分は、辺境伯となりま~す。当年とって、200歳になりますでしょうか~」
生まれ変わる以前の名前を用いた理由については、日々、屋敷の女共が、俺の名前を好き好きに、呼んでくれることを考えれば、御理解、戴けようと言うもの。
俺からしてみれば「彼」は、完全に別人以外の何者でも無いが――ネルたちに聞く限り、俺が彼の生まれ変わりであることは、間違い無いらしい。
ここはひとつお手軽、便利に。その名前を使わせて戴くことにしよう。
「え~っつ……思うことは、色々ありますでしょうし、恐らく今回、皆さまを焚きつけた方のお名前も、想像はつきますが~、リリェ!? げふっ! げふげふん! 失礼しましたぁ~。こちらとしましても、好き勝手にやられるのは、面白くありませんし~、毎度、毎度こんなことを繰り返すのも面倒臭いので~、……えぇ~っと……デモンストレーションって、こっちの言葉で、なんて言えば良いんだ? アルパゴン? 示威? どうでも良い? んじゃあ! お前が変われやぁああ~~~っ!? ピ――ッ! ……お聞き苦しいところを失礼しました~、……百聞は一見にしかず、皆様、取り敢えずお下がり下さ~い。こちら側の力を御披露させて、頂きたいと思いマース。危ないですよ~。お下がり下さ~い、死んじゃいますよ~」
拡声器を通しての慣れないスピーチに、一杯一杯の俺。俺の言葉を、目の前の軍勢を意のままに操ってみせる――トーヴェの速弾き。
ぞろぞろと、王国側の大軍勢が戦闘の開始地点に戻り終えたのを確認すると、俺は拡声器のマイクのスイッチを再び入れて、デモンストレーションの開始を報せ――。
マイクをスピーカーのフックに引っ掛けると、今度は、陶片の画面にアプリの様に並ぶ、ボタンを押した。
(しまった……ポチっとな♪ って台詞を口にする、数少ないチャンスだったのに……)




