ワイルド過ぎて滅びそう
あまりの無理ゲーっぷりに眩暈。
「ツォンカパ? でも、そのワーグってのは……」
指を折り畳み、ワンコの肉球を思わせる形を手で作る。
「こんな感じの手なんだよな? んじゃあ木には登れないよな? 多分。木の上から、弓で矢でも射かけ続ければ、どうにかなるんじゃね?」
我ながら名案に思えた この案。ツォンカパは首を振って、それを退けた。
――これを名案と思える、俺の気楽な、お脳を責めるなら、それはお門違いだ。生まれも育ちも日本の、生粋の日本人の俺に、殺し合いの知識を思いつけと言う方が、どうにかしてる。
「……まさか。飛び道具はオークにとって、卑怯な武器だとか言い出すんじゃ……無いだろう……な?」ありそうなだけに……一抹の不安が頭をよぎる。が、ツォンカパは それを短く否定した。
「まさかな」
「んじゃあ、なんだよ? なにが気に入らないんだよ?」
俺が問い詰めると、ツォンカパは俯いて――
「弓はあっても……矢が……無いのだ」
「……は?」その言葉に一瞬で、思考停止「ど……どゆこと?」
返された説明は……まぁ、オークらしいと言えば、オークらしい? しかし、理由はどうあれ、争い事が大好きなオークが、戦いの備えを怠る理由としては――釈然とできないまでも一応、納得できる説明であるようには思えた。一応。
「お前が考える通り、我らオークは先陣を切って、もののぐを振るい、戦うことを尊ぶ」
「知ってる知ってる」
「そのような理由から飛び道具は軽く見られ、それを使う者も臆病風に吹かれたオークと嘲られる。だが獣を狩るために弓を用いようと、それを笑うオークはおらん」
「じゃあなんで? 矢の蓄えを作ってなかったんだよ?」
「……矢を作るオークが、……居なくなったのだ」
「……えぇっと?」
「弓が軽んじられ、それを扱うオークが、あざ笑われ、そして矢を作るオークは更に……」
「おぉお……。お、オーケー、オーケー……全て理解した」
「……オゥ……ケー? なんだそれは。何を言っている?」




