握り寿司のロアが囁くのじゃ
「……ここがアンティグアであれば……こんな事には、決して……ならんかったのじゃ……許して……欲しいのじゃ……」
誰かが履き古したストッキングで、ぐるぐる巻きにされて転がされた、ハトたちに向かって、ヴィルマがぽつりぽつりと呟く。
「……残念なことに……今日は、お前たちを……美味しく食べては、あげられん日のようなのじゃ……」
通じるはずも無い、その言葉に対して、抗議の声にも聞こえる、鳴き声。
「ヴィルマ! 今日は、ハトさんたち食べる必要無いでしょ?! 早く、逃がしてあげなさい! それから綺麗に石鹸で手を洗うのよ! 早くしないと頼んだ、お寿司届くわよ!」
ネルのささやかなカミナリに、飛び跳ねる様に反応する褐色ロリ。
眺めていると、少なくない数を捕らえ、ヴィヴィたちが1人につき、1羽ずつ担当する形で手に抱え、連れて帰ったハトさんたちの拘束を解くのに四苦八苦。
「ま! 待つのじゃ……ネル! す、スシは! きっと、わしのようなイイ子に食べられたがっているに違いないのじゃ! ロアも……そう! ロアも、そう囁いておるのじゃ! じゃから間違い無いのじゃ!」(……どんなロアだよ)
暮らしの中で、人よりはヴードゥーについて、詳しくなったつもりの俺。経典が存在せず、明文化された教義が存在しない形の無い、あやふやな信仰であることは心得ていた。けれども、そのことを差し引いても「お寿司」の機嫌をそっと……伝えてくれるロアと言うものは、一体なんなのか。




