赦されざる者
苦虫を噛み潰した表情で立ち上がる、俺の身体についた汚れのあちこちを叩き終えると、ネルはその場の皆に向き直り「ありがと♡ アタシのつがいをみんなで連れて来てくれて♬」(……オワタ)見る者を釘付けにする、非の打ち様も無い抜群の笑顔で感謝を口にした。
一拍、二拍の思考停止ののちに、その場には――悲鳴にも似た声が沸き上がる。
「……えっ?! つがい? 彼女さん? お2人……付き合ってんの?」
「ええ、まあ~ぁ、……お互い、離れられない仲って言うかぁ~ぁ、……巣作りして、一緒に暮らす仲って言うかぁ~ぁ……」
「すいません。学内新聞の者です。失礼ですけれど、お2人の仲が謎過ぎますので、取材させて下さい」
「アタシはイイんだけどぉ……この人が、凄く……そう言うの苦手なの……ゴメンね」
「か、彼女さん……綺麗すぎます。モデルさんか……なにか? なさってます?」
「えっ? いいえ。毎日、ご飯の準備とか、お洗濯とか、忙しいし?」
「……巣……巣って言うと、愛の巣って意味……? ……一緒に暮らしてるの? 同棲? 学生結婚してるの?」
「つがいとして、営巣してる間柄でアリマス! 早く可愛い雛が欲しいでアリマス!」
「彼氏さん……のお家が、物凄いお金持ちとか……ひそひそひそっ……」
「う~ん……土地ばかり広いけど……なぁんも無いわよ……ねぇ? むしろ唸るほど、お金持ってるのは、アタシの妹の方で……ま、どうでも良いわね♪」
「……ぶ、部長……俺は、この野郎が憎いッス。今まで生きて来て……他人をこれほど妬ましく思ったことは無い……ッス」
「……お、俺もだ……俺もダアァァァアアアッ?! こ、このおっぱいが……こんな……こんな……こんな奴のモノだと……オオォォォオォォっ!?」
「頑張って! この人、とっ捕まえたパワフルさとバイタリティーで、早く貴方たちも つがいを見つけるのよ! このおっぱいは、この人専用だけど……。貴方専用のおっぱいも必ずどこかにあるわ! アタシが保証する! 探すのよ! アタシは、この世のすべてをそこに置いてきた!」
(なに言ってんだ……お前)




