俺と彼女のずっと変わらない、力学的構図
どこの誰に受けた指示かは分からなかったが、マネージャーがスマホを切って、気怠げに正門に俺を運ぶように指示する。
「た、頼む! 逃げさせて! 頼むから! お願いだから! この後の展開は読めてんだって! お願いだから逃げさせて! 昔話とかだったら、これだけ必死に、お願いすれば、どんな情け容赦の無い、主人公でも逃がしてくれるぞ! ねぇってば!」
「黙れぇい! この性犯罪者ぁ!(やめて! その表現! わりと普通に堪えるから!) ……後で貴様は、タックルのサンドバッグ代わりにしてくれるわっ!」
「……先輩、俺ら……お手柄ってことで、新聞とか来たりして……取材されて、……ヒーローになったりして……モテたり……するんじゃないッスか? じきに夏期休講ッスよ! アバンチュールっスよ!」
「そうかも……知れんな。ぐはははははっ!」
もがく俺を意にも解さず、メンバー全員で愉し気に会話を弾ませ――地面に落ちた、まだ息のあるセミさんを巣へと運ぶ、蟻さんのように、えっさ♪ ほいさ♬ と運んで下さるビー部の皆さん。
目的地に着くなり、乱暴に地面に放り出される俺。
雑に放られた痛みに呻いて目を細めていると、――影がかかった。
恐る恐る……影の主を見上げる。
逆光を背にする、ネルの顔を見上げて見れば、それはそれは――エグさを極めつくした、ドヤ顔を彼女は浮かべて見せていた。
* * *
「はァい♪ たっちしてぇ~?」
彼女が手を差し伸ばす。そのやりとりを信じられないものを見る様子で、無言で見守る――周囲に集まった学生一同。
 




