何は無くとも、素晴らしき故郷
気が向いた年には、お茶と軽食を出すと言った程度の活動内容。貰っている同好会の活動予算は全て、部屋で飲み食いされる、ジュースとお菓子に消えて行くと言う始末。
しかし、その活動における生産性は皆無でありながら、文化部合同のコンパなどで、自身が所属する部の説明を行った際の――他大学の女子の食いつきは「え……? サリンジャー同好会? なにそれ?」と、キャッチは毎度、比較的良好と言う、ネタ枠としても極めつけな独自のポジションが確立できていた。
もっとも、これらによって思惑通りの結果が、今まで合コンの場で得られたのか? と聞かれてみれば……悲しいほどに、お寒い限り。
「本当に……大丈夫か? 春夏秋冬くん……」
俺の説明を受けて最初は、呆然としていた様子だった同好会々長が、心配そうに訊ねてくれた。
俺のことを兼ねてから知ってくれている、こちらの世界の人間との――ささやかなやり取り。久しぶりに経験した、俺を心配してくれる温かな気遣いに、言葉を無くして、目頭を押さえてしまった。
* * *
「……ごめんね百千万憶君」悲しそうな表情で恩師が詫びる「……君、もう僕の講義受けに来なくていいから。単位はさし上げます」それまでであれば飛び上がって喜んだ、台詞が教授の口から洩れる。
あっけに取られて、こちらを見つめる――講義に詰めかけた他の学生たち。俺が、なによりも苦手とする、悪目立ちで晒し者にされる際に、感じることができる空気が、辺りに拡がって行く。
前日。色々と、ネルのろくでも無い点をアレコレと思い返して、怒りに悶々としていたお陰から、睡眠不足に陥っていた俺は――同好会に顔を出した後で出席した、フランス語の講義で、教授に当てられ、そして……それまでの自身の程度もわきまえずに、求められるままに応えて見せたことで、この針のムシロは完成した。




