なにが、どーしたよ……
「……また、何が起こった。外見、また変わったってことか?」
「多分、アタシのおっぱいで若返ったアンタが、今までと違って身体を動かすようになったのと……。毎日のように繰り返される身体の中の大工事のせいでしょうね。あとは、この領域だから? ここは生命が成長することはあっても、老いるなんてこともない……都合のイイ~~~っ場所だし♬ 周りの植物さんたちにしたって、枯れたりとかしないでしょ? なんにせよ、これでヒールの高い靴を履いても、しっかりアンタとバランスが取れるから、アタシもラッキー♪」
裸のまま浮かれるネルを見ていたら、頬が緩むのを感じると同時に。
現世へ戻っての十人並みの、平凡な生活を送る日常は――もはや、手の届かないほどに、遠退いたように感じられた。
* * *
「――ツモイよ」(……そら、来た)
翌日、ツォンカパの方から声をかけられた俺は、この口数が少なすぎて、コミュニケーションに齟齬すらきたすオークが、ようやく口を開いて、昨日までの おかしなそぶりについての、釈明を始める気になったに違いないと踏ん――。
「我ら頌の部族の命脈もこれまで。お前も早く、この森を離れるがいい」
……で、いたのだが。あまりに面食らう言葉に、ツォンカパを引き留める声を発するのが――思わず、ワンテンポもツーテンポも、遅れてしまっていた。
そしていつもの如く、自分の言いたいことを言い終え、要件だけを済ませると、踵を返して森へ帰ろうとするツォンカパ。
「待て待て待て待て待て……」
「……………………」
「何がどーした? いきなりよ。理由を話してみ? ん?」
「部族の者では無いお前には、関係ナイ」
「『関係ナイ』訳あるか。どーすんだよ? これからの稽古はよ? あんたが無理矢理、俺に稽古を今日まで課してきたんだぞ? 理由の説明も無しに無責任に打ち切るのが、あんたの言うオークの礼儀ってヤツか?」




