ガチ勢、増える……
「だ、旦那……様?」顔を赤らめて、もじもじとして目を泳がせる彼女「どうしたの?」
ひょっとして食べ足りなかったのだろうか。今日、お互いにあんな大騒ぎを繰り広げた後な訳だ。出来る限りのことは――それが彼女の我儘であっても、聞くつもりにはなっていたの……だが?。
振り向く俺のシャツの裾を、両手で掴んで握り締める彼女。
「あ、あた……あたし、……な、なんてことを……は、はしたなく……はしたなく……が……がっついちゃった……も、もう……旦那様に……妻の……一人として貰って戴くしかっ」
――振り出しに戻る。
* * *
翌朝、彼女は食堂に姿を見せると、貴族の礼法に則った振る舞いの元、決闘に敗れた結果を受け入れ――ここしばらく屋敷の空気を掻き乱し続けたことについて、丁寧に謝罪の言葉を俺を含めた皆の前に並べてみせた。
そんな彼女には悪いが、この……取り繕われた空気の居心地の悪さたるや……ぞわぞわする……。彼女の謝罪と、それに対して厳しい対応を見せない俺の様子に(厳しい対応なんて、考えすらしなかった訳だが)屋敷の皆は、ホッと胸を撫で下ろす。
漸く騒動が、これで終了した訳だ。
俺が彼女に、もし――厳しい態度でも見せようとしたなら、口添えを考えていたのだろう。アルシェノエルも肩の荷が降りた……と、安堵の表情。
その彼女に、デズデモーナは近寄ると、決闘前に交わした文書の内容を確認させて欲しいと、口頭で内容を諳んじてみせた。
「……と、言う内容で、宜しかったですよね?」
「ああ、その通りの内容であったと記憶している」
やり取りの意図が読めないアルシェノエルが――訝しむ。
(あ、あれ? なんだか……面倒クサイ展開の匂いが?)
 




