唯々、運が良かっただけ
考えれば考える程、薄ら寒くなる、穴だらけのプラン。実行に移した、自分のアホさ加減が恐ろしい(と言うか……一番頭のおかしい奴は、俺でしたって言うオチだ……コレ)
想像以上に長い舌を這わせ、スコラスチカが口中の酵素で、繭玉を溶かす。デズデモーナは意識は失っていたが、規則正しい呼吸を繰り返していた。ドクター・チェックの必要は無さそう。だけど今の俺は、デズデモーナに対しての罪悪感が、半端無い! 自己満足と言われようと、大袈裟だと言われようと、できるだけのことはやらせて頂いちゃう!。
「ネルっ!」少し離れた場所で、がっかりした様子を隠そうともしない、バカ女に声をかける。
口から呆けた様な空気を吐き出し、とぼとぼと言った様子でやって来る「……別に、身体に異常なんてある訳無いわよ。アタシの領域の中なのよ……?」
安堵を洩らす皆を尻目に「……アタシ、今から、部屋で……ヤケ酒するからね……不貞寝しちゃうんだから……晩御飯は、みんな……適当に食べるのよ……」それだけを言うと、肩を落として屋敷へと戻って行った。
ネルの後ろ姿を見送った後で――その場の皆の顔を見回す。
「……だれか? アイツの代わりに……この人数の晩メシ……作れる奴……居る?」静まり返る一同。
(……仕方ない)。
俺は悪魔に顔を向けると「アルパゴン……寿司を取れ。並み握りを人数分、出前を頼め。ああ、いや……いいや。もう桶で頼め、人数分」
結構な出費になるのは確実だが――今日で、デズデモーナとは手打ちな訳だ。別にこれくらいの贅沢をしたところで、誰にも文句を言われることは無いだろう。




