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おっぱいで人生を踏み外したバカな男の話を聞かないか?  作者: ……くくく、えっ?
三章:うろくづの森

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現世は遠くになりにけり

「……うん。やっぱり……イイわ」


「……なにがだよ?」


 稽古の後の「御褒美」をネルから賜った、その日の夜。ベッドで横たわっていた彼女が、そんなことを口にした。


「気付いてないの?」俺の問いかけに、少し驚いた顔で身体を起こして、ネルが聞き返す。


「なんだよ?」


 御褒美あとの気怠い空気ひととき。


 ネルとのやり取りに癒されつつ。話をしていたらネルは、少し嬉しそうな表情を浮かべ……。


「ツォンカパさんに、稽古をつけて貰うようになって、アンタ変わったわよ。 なんかね?  すっごいパワフルになった♪」


「あ~あ~あ~っ。生々っしい~ィ。聞きたくなぁ~い。聞きたくなぁ~い」


 相変わらず赤裸々に過ぎる、コイツの この手の話は──賢者モードの俺には胃もたれさせられる。


「それにね? ちょっと立ってみて?」


「?」


 言われるままに──ベッドの脇に裸のまま立つ。ネルも続けて立ち上がる。


 窓から射す月明かりに照らされた、ネルの身体を目にした俺は──出会ってから、もう20年近くになるというのに、何ひとつ変わらない、その美しさに目を奪われていた。


「ふっふっふぅ~♪ ずっと綺麗な、つがいで良かったわねぇ? アンタ、ほんとラッキーよ♪」


 出会った日の──あの夜と同じように、俺の考えを読み取って、自信たっぷりの笑顔。


「んで? それでなんだよ? 俺が何に、気付いていないって?」


 それが無駄なことであるのも忘れて、話を逸らそうとする俺。


「気付かないの?」


 そのことにネルは触れなかった。コイツは時々、こういう気遣いを、見事に働かせてみせた。……ただ単に、取り沙汰するまでも、無かっただけなのかも、知れなかったけれど。


「?」 


「気付かないかぁ……。人間のオスって、この手のことに、ホント気付かないわよねぇ。アンタ、以前と目線の高さが変わったと思わない? 多分、10㎝以上は背が伸びてるんじゃない?」


 言われてみて初めて。ネルと出会った時の彼女からの視線と、今の彼女の見上げ方が、違っていることに気付いた。

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