彼女のパンツ……心意気は純白
連れ合いが働いた悪事についてを解明している、その合間に――デズデモーナの馬が迫る。既に彼女は鐙から足を抜いて、鞍の上に立ち上がる準備に入っていた。
(パンツが……見えてもーた!)。
これまでかと覚悟を決めて目を閉じた俺。彼女は、俺の馬が取った行動に察したのだろう。
――背後に遠ざかっていく、蹄の音。(…………?)
恐る恐る目を開けて見ると、胸のブートニエールは そのまま変わらずに――咲き続けていた。
あくまでも正々堂々とした勝負に拘る彼女の意志の顕れ。
(た……助かった……)
手にした槍を取り落としてしまいそうになる脱力。と言うか取り落としていた。地面に落ちるなり、割れて砕ける馬上槍。
俺は試合に、まるで関係の無いところで、使える槍を1本ロスト。
ネルに買収されやがった裏切者は、割れた槍の破片に、馬首を返して鼻を近づけて匂いを嗅ぐと、馴染みある匂いに、バキバキとトウモロコシ澱粉の塊を臼歯で噛み砕きにかかる。
手綱を引いてそれを止めさせ、出走ラインへと向かわせようとすると、目の前の御馳走を貪ることを邪魔された裏切者は、不機嫌そうにひとつ嘶いて、ぽっくりぽっくりと蹄を鳴らして歩き出した。
(お……おま……お前っ……マジで馬刺しに……しちゃろうか……)
面頬の隙間から、ネルを見れば――ヘっタクソな口笛を吹き鳴らして誤魔化そうと、べったべたの態度。
――それで、お茶を濁そうとか嘗めてんのかと。
(本当に……本当に……俺は、一体……なんで、こんな奴のために)
 




