起死回生の秘策だったら……イイな
「それで御屋形様よ……」クィンヒルデが、疲労困憊の真っただ中にある俺を、気遣う様子など見せもせずに問う「勝てそう……なのか?」
「クィンヒルデぇ~……分かっんだろ? 勝つ負けるじゃねぇんだよ。こう言うのはオレらの闘諍と同じで、獣の様な殺し合いを愉しむためのもんなんだって(んな訳あるか) 勝つの負けるの、生きるの死ぬのなんて二の次だってことくらい、オークのメスやってんだから分っかんだろ? なぁ~? ツモイ?」
この馬上槍試合と言うものに沸き立つものでも感じるのか――騒々しいウルリーカに、心の中で「帰ってえぇぇ~~~~~っ?!」と悲痛な叫びを上げ始めた頃。
「……御屋形様よ。本来であれば、敗れたメスが、オスの闘諍に口を挟むなど、恥じ入って慎むべきものだが……お困りの様子に見える。勝利をお望みと言うのであれば、私に考え……」
そこまでを口にしかけたクィンヒルデの両肩を掴む。
「あるのか?! 勝つ方法が!?」
見上げて、すがりつく形で詰め寄る、お世辞にも絵にはならない光景であるのは間違いないが、彼女は濃い鉛灰色の肌をうっすらと朱に染めて
「……あ……有るぞ」
口籠って、秘策を抱えていることを教えてくれた。
――勝てる。これでもう……こんな怖い思いをしなくて済む!
「お、教えてくれ! クィンヒルデ! なんだ! 俺は一体、何をすれば良い! どうすれば彼女に勝てる!」
掴んだ彼女の両の肩を激しく揺さぶり――オークの部族の中でも一流の戦士と誉れ高い彼女の助言を乞う。
「ふっ……ここに来て、ようやく私が御屋形様のお役に立つことができるとは。嬉しい限りだ」
(じれったい! もどかしい! はよぅ?!)




