馬上槍より先に、ぼっきり砕け散る――俺のメンタル
咄嗟に仰け反る様にして、その穂先を交わす事には成功した俺。これで、彼女の槍に俺の甲冑のいずれかの部位なり、盾の縁なりが、かち合って、へし折ることができたなら――俺は、姑息に勝利を拾うこともできたのだが……。
彼女の槍の穂先は、俺の心を見透かして嘲笑うかの様に。槍の身を微かに削った程度で、折れることなく――仰け反った俺の兜の面頬に空いた狭いスリットの上を、目の前で跳ね上がる鉄道の遮断器の様に通り過ぎて行った。
身動きが制限される甲冑。バランスを著しく損なう馬上槍。疾走する馬からもたらされる断続的な衝撃――俺は、とっさに彼女の槍を躱すことには成功してはいたが、落馬寸前なまでに態勢を崩してしまっていた。
馬の鞍にしがみつき、なんとか落馬を避けるために格闘していると、馬の方が俺の様子を察してくれたらしく、速度を緩め、からくも俺は無様に落馬することだけは免れた。
(……死ぬ……死んじまう……いや、死なないだろうけど、死んじまう……)
走る馬の猛りが乗り移ったかのように心臓が早鐘を打つ。緊張と味わった恐怖に胸を押さえて、過呼吸気味な乱れた息のまま、彼女の様子を盗み見る――彼女は、接触した槍の身を確認して、槍に大した損傷が見られないのが分かると、そのまま出走ラインへと馬を戻す。
この決闘の相手であるところ俺に、変わらず一瞥すらもくれない彼女。
……あ、謝りたいぃ~~~~~!! こんな心底、怖い思いさせられるくらいなら、彼女に恥をかかせてしまったことに対して、心の底から謝りたいいいぃぃ~~~~~っ!!。




