裸の彼女
なにが、どうしたのか……と言うより、コイツの精神構造は一体、どうなっているんだ? と不安を覚える。と言うかハーレムが、どうとか言い始めてから、どんどんおかしくなりやがる。
面頬を跳ね上げ、籠手から抜いた指の腹で、目を拭った後で、ネルが向く方を注視する。そちらを目にした俺は、言葉を無くしていた。
ネルのみならず――皆がざわめく視線の先には、鎧を身に纏わず、盾も手にせずに槍のみを携えたデズデモーナが馬に跨り、こちらを見据えて近づいて来る。
彼女の両目には、激しい怒りにも似た色が。
甲冑の一切を身に纏わず、スカート姿の彼女は、太腿まである編み上げのロング・ブーツを履いてやって来た。ブーツの足首には拍車を固定するベルトのバックルが光って見える。
どうやら彼女は、そのいでたちで、この決闘とやらに挑む覚悟なのか――拍車の鳴る小さな音が、それを告げていた。
* * *
浮かれ調子で、くるくると正体不明な踊りを踊り狂うネル「ど、ど、どうしよう! そ、そうだわ! 赤ちゃんの可愛らしさを讃える鳴き声! 鳴き声の練習しとかなきゃ! きゃ……きゃわ? きゃわわ……きゃわわわわわわ――っ?!」
(……バカは……放って……おこう……動物め!)
デズデモーナの側に馬を進める俺より早く、近くに居たことで先んじて駆け寄ったアルシェノエルが、彼女に事情を聴いていた。
「デズデモーナ、甲冑と盾はどうした?」チームメイトでもある彼女を心配するかの声「不要です。これ以上、辱めを受けて、恥を抱えて生きなくてはならないくらいなら、死を選びます」そんな身を案じる声を――撥ね退ける彼女。
2人に近づいた俺は聞かずにはいられなかった。
「……あ、あのね? えっと……審判……? これって……ありなの?」




