馬子にも衣裳
決闘に関する文書のやり取りが済んで翌日。審判を務めるアルシェノエルが、使用する馬の吟味や、場の準備があるとのことで、決闘までの3日の猶予が申し渡された。
デズデモーナは、その3日の間――部屋に引き籠って姿を見せなかった。
俺とは、もう顔も合わせたくは無いと言うことなのかも知れなかったが――この決闘、なんとしてでも勝たなくてはならない事情が出来てしまった俺は、残念にもそれを気にしている余裕などあろうはずも無く(……でも一体、なにをどうしよう……?)
相手となる彼女は、女だてらに国中を馬上槍試合を巡り続けて、転戦を重ね 今や名実ともに強豪として知られる、チームのメンバーのひとり。しかも、その中でも実力は折り紙付きの優秀な騎士らしい。
考えた所で、そうそう良い考えなど思い浮かばない。俺は指輪からミスリルに、アダマンタイト、さらにはオリハルコンまでが用いられた、周囲の空気が揺らめくほどの濃密な力を辺りに漂わせる――分不相応過ぎる、デシレア謹製の全身鎧2領の内、1領。漆黒の甲冑を身に纏うと――、
(今! 確実に俺に似合うBGMは、ダース・ヴェイダーの登場シーンの曲だ!)
泥縄と呼ば呼べ! と言った、半ばヤケクソの心持ちで、馬場に踏み出し「馬体が厚すぎる」として、アルシェノエルの選から漏れた1頭を引っ張って来させ、馬上槍の稽古とやらに挑んでみる事にした。
(大丈夫だ! 問題無い! 俺はヒース・レジャー主演の映画を4回は観た!!)




