ぱよえ~ん
藪から棒ではあったが――彼女が、この仕儀に至った経緯については……まぁ、分からないでも無かった。
彼女は彼女なりに、親族のやらかしたことに対して、貴族としての体面を保つべく、恥を忍んで、俺にモーションをかけてくれていた訳だ。
別に、俺に対して恋愛感情なんかがあった訳でも無く、仕方なく――それでも貴族としてのけじめをつけるために。
それに対して、彼女の胸の内など一顧だにすることも無く、気配を察するや、汐が引くかのように――その場、その場からフェード・アウトし続けて見せた俺。
俺に避けられ、彼女が感じた屋敷の人間たちの目は、さぞ耐えがたい好奇の目か、憐みの視線として感じられたに違いない(……いや、実際のところ、好奇の目は無いな。ナイナイ。そんなロクでも無い目で彼女を見る人間が、この屋敷に居るなんて思えない)。
カエルの顔におしっこ、俺の顔に長手袋。
俺は、こんな中でも――料理で汚れた口まわりが、彼女の高価そうな手袋を汚しはしないか? などと言う、度し難いことを考えるばかりで。
「……デズデモーナ」静まり返る食堂で初めて、ロザリンドの声。その声に耳目もくれずに、淡々と俺に話しかける彼女「貴方は、決闘を挑まれた側になります。決闘の内容を決める権利は貴方が有します。それを決めて下さい」
ハラハラとした様子で――、一部は……わくわくした気配を撒き散らしながら、成り行きを見守る食堂に会した一同。そして、食堂と厨房を繋ぐ扉を、ほんの少しだけ開いて、成り行きをこそこそ見守る、酒瓶を掴んで戻って来たネルの気配。
「……仕方が無い……んだろうな」これ以上、この件から逃げられないことを観念した俺は、覚悟を決め「――ぷよぷよで……勝負をつけよう」決闘内容を提示した。




