逃亡中
既に人の人生の1回分は無駄に生きた訳で――それなのに下半身の声に素直な、ギラつかせる様なものを持っているなんて、気恥ずかしい以外のなにものでも無い。
彼女たちの様な妙齢かつ、見目も整った少女たちに迫られれば、理性を保つのも大変な訳だ(ネルに云わせれば『だったら!』……と言うことになるのだろうけれど)
そんなものをネル以外に赤裸々にさらけ出すなんて、ちょっと無理な注文と考えては、貰えないのか――そうは考えないんだろうな……ネルに至っては、あいつのメンタル……動物と言うより、昆虫みたいだもんなぁ……繁殖繁殖繁殖、食う、繁殖繁殖みたいな。
ホント、どうにかならないものか……これ。
粗末な小屋の中で、やぶ蚊と闘いつつゴロゴロしていると、外で枯れ枝を踏む音。足音の主は、小太郎だった。俺の匂いを辿って、様子を見に来てくれたらしい。俺は、その夜――今も甘え癖が抜けない小太郎の大きな身体をベッドに、眠りについた。
* * *
デズデモーナからのモーションを回避するために、逃げ惑うこと――それから数日。
まだ早い朝の時間帯。屋敷の厨房に忍び込み、冷蔵庫の中から、目ぼしい食料をひったくって、逃げ出そうとしたところで、ネルと遭遇。
「……もう、イイから。いい加減……巣に戻って来なさい」
呆れ果てたと言う、根負けの溜息を深々と吐いての、ネルからの降参の申し出。
「夜中に厨房……汚されたままにされても……イイ迷惑なのよ。この間なんて、朝から厨房で転んで、お尻打っちゃったじゃない」




