人は後に、俺のことを「ローションの魔術師」と呼ぶようになる……(嘘)
「まぁそれは、どうでも良いや」気を取り直して、と言った具合で彼女は「折角、久しぶりにこうして顔を突き合わせたんだ。ついでだから、オレと朝までガキでもこさえようゼ♪ なっ♫ 姐さんの喜ぶ顔が目に浮かぶようじゃねぇか。ええ?」やはり、俺の価値観とは相容れないことを口にした。
「……なんで、今の会話の流れから、そう言う展開になるんだよ」
そして人の居ない夜の厨房で、力ずくで俺を押し倒そうと迫り「さぁて、さてぇ……オレの腹から生まれてくるのは……オークのガキかなぁ? それとも人間かなぁ?」と、爛々と目をギラつかせて息も荒いウルリーカを相手に「……て、言うか……いい加減に悟れや……俺は、お前ら……女共に好き勝手されるのを喜ぶ……趣味は……ねーんだよ」とギリギリと、手四つで鎬を削る、取っ組み合いを演じる羽目になり――当然の如く、力負けして組み伏せられてしまっていた。組み伏せられた折りに、床に散らばった台所洗剤に手を伸ばす。
洗剤のボトルを手に取ると、組み付く彼女の手や腕に、ぴゅぴゅっと! それをひと吹き。這う這うの体で脱出すると言う――大変、無駄過ぎる立ち回りを演じることに(サンキュー! ママレモン!! ぬるぬるぬるぅ!!)。
まさか……かつて、ネルと共に研鑽を積んだローション遊びが、こんな場面で生きようとは――。身体についた洗剤は、屋敷を飛び出した後で。既に少し肌寒い気温ではあったが、泣く泣く泉に向かい、洗い落とした。
そんな訳で、再び頌の村の狩猟小屋で夜を明かすことに。
ネルと連れ立って長くなる今。
――今更、リア充なモテ期なんて、およびでも無い。なにより、あまりにも疲れる。こちらも別に性欲も枯れ果てた、出涸らしと言う訳では、無いけれど……。




